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北海道大学大学院 医学研究院・医学院 社会医学分野 公衆衛生学教室

教授 玉腰暁子

名古屋大学医学部卒、名古屋大学大学院医学系研究科満了

名古屋大学大学院医学研究科准教授、国立長寿医療センター治験管理室長、愛知医科大学医学部(特任)教授を経て2012年4月より現職

当教室が目指すところは、胎児・新生児から高齢者まで、健康な人も病気を抱えている人も社会で生活するすべての人々がその人らしく身体的・精神的に健康に暮らせる社会を実現するためのエビデンスを提供し、実践活動、社会制度設計につなげることです。そのために、疫学研究、特に健康障害事象の発生に関連する要因を検討するための長期的な追跡研究、介入研究を行い、予防策立案へとつなげていきます。これには、多くの人々の息の長い協力が必要です。また、様々な現場に出かけ、コミュニケーションを図りながら研究を行うことが求められます。

2013年7月、富士山が、世界文化遺産に登録され、話題になりました。それに比べるとニュース性は低かったようですが、「和食;日本人の伝統的な食文化」が12月、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。ここで提案された「和食」とは、「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する社会的慣習であり、料亭で出されるような特別な懐石料理や、特別な日に食べる特定の食事(例えばお節料理)を指すものではないそうです。とはいえ、日本人が習慣的に食べている食事がすべて和食かと言えば、もちろんそれも違う気がします。提案理由に挙げられた「和食」の特徴は、以下の通りです(農林水産省HPより)

● 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

● 栄養バランスに優れた健康的な食生活」

● 自然の美しさや季節の移ろいの表現

● 正月などの年中行事との密接な関わり

習慣が健康に及ぼす影響に関しては、いくつもの研究が行われています。例えば、塩分の過剰摂取が高血圧を生じ脳出血のリスクを高めることがわかり、日本各地で減塩運動が進められ効果を上げてきました。また、脂肪エネルギー比率の高い食事は、肥満、動脈硬化などいわゆる生活習慣病の原因となることから、ファストフードやスナック菓子の取りすぎに警鐘が鳴らされています。しかし、人は1つの食材だけを食べ続けているわけではないことから、特定の食品の健康影響に関する検討はまだ十分ではなく、また食べ合わせなどの相互作用に関する検討はさらに多くありません。また、上記の特徴にも挙げられているように、食べるという行為は栄養素の体内への摂取にとどまらず、家族や地域の人々との交流とも深く関連しています。そのため、食材自体の健康影響に関する検討のみならず、食べるタイミングや食事にかける時間、一緒に食卓を囲む人々など食に関わる様々な要因がどのように健康に影響するのかの検討も必要と考えられます。

今回、「和食」が無形文化遺産に登録されたことから、どのようにこの文化を保護し、次世代に伝承するかが求められます。北海道は、稲作や畑作の町、酪農の町、漁業の町、観光の町、工業の町などバラエティに富んだ179の市町村からなり、開拓の歴史を背景にそこには国内の様々な地域の文化が持ち込まれています。老年人口は24.7%と全国23.0%より高いものの、これは文化を伝えられる人が多いことも意味します。また、一次産業で日本を支え(農業産出額12%、海面漁業・養殖業生産額19%など)、カロリーベースの食料自給率は191%と全国一位です。ただ、生産額ベースでは4位にとどまり、生産はともかく、その後の加工、流通、販売の過程に工夫の余地がありそうです。北海道で食を中心として健康に関して検討した結果は、必ず日本全体に役立つものになると思われます。

当教室では、人々の健康に関わる研究を多面的に進めるために、多彩な人材を求めています。医師、保健師、看護師、薬剤師、理学療法士など医療系職種はもちろん、管理栄養士、臨床心理士や社会福祉士などの専門職種、社会学、法・経済学など様々な領域との協同こそが重要です。

一緒に研究を行いたいと考える皆さんの参加を心より歓迎いたします。

 (2014年4月)

所在地

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