マルチビタミン剤と脳卒中

董 加毅


 マルチビタミン剤に含まれる各種のビタミンは抗酸化作用をおこすことから、脳卒中の予防効果が期待されています。今回、1988~1990年に実施した全国20地区におけるマルチビタミン剤の摂取やその他生活習慣、健康状態等に関する調査に参加され、約20年間追跡できた72180名のデータを分析し、学術雑誌(Stroke 17巻 1167-1172 2015年)に発表しました。ここでは、その概要を紹介します。


マルチビタミン剤摂取と脳卒中に明らかな関連はありませんでしたが、マルチビタミン剤を毎日のように飲むと回答した人の中で、果物と野菜の摂取が1日3回未満の人は脳卒中の危険度に低下傾向がみられました


 マルチビタミン剤摂取に関するアンケートの答えから、「飲まない」、「時々飲む」、「毎日のように飲む」の3つのグループに分けました。そして、「飲まない」群を基準(1)とした場合の「時々飲む」群、「毎日のように飲む」群のそれぞれの脳卒中死亡危険度を計算しました。危険度は、脳卒中に影響する可能性がある要因(年齢、肥満、教育歴、高血圧、糖尿病、脳卒中家族歴、飲酒、喫煙、運動、ストレス、および魚、赤肉、野菜、果物、総エネルギーの摂取状況)を調整して計算しています。その結果、図のように、果物と野菜の摂取が1日3回未満の人で、マルチビタミン剤を「毎日のように飲む」と回答した人はマルチビタミン剤を「飲まない」と回答した人に比べて、脳卒中の危険度は0.67倍であり、マルチビタミン剤摂取による脳卒中予防効果の可能性が示されました。一方、果物と野菜の摂取が1日3回以上の人ではそのような傾向はみられませんでした。


 果物と野菜の摂取が1日3回未満の人はビタミン摂取量が不足しており、マルチビタミン剤摂取が脳卒中の発生に予防的に働くことが考えられます。一方、果物と野菜の摂取が1日3回以上の人はビタミン摂取量が十分であり、マルチビタミン剤の効果はあまりないことが考えられます。
 今回の研究のような一般の人々を対象としたマルチビタミン剤と脳卒中についての大規模な研究は、今までほとんどなく、予防効果を示唆する結果は重要な知見といえます。今後、さらにマルチビタミン剤の脳卒中予防効果を確認するためには、食事からのビタミン摂取量によるサブグループ解析が必要と考えられます。

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