女性における雇用形態と死亡リスクとの関連

本庄かおり


 雇用形態が健康に影響を与える一因であることは多くの先行研究により報告されています。雇用形態の健康影響には男女差があり、またそれは社会によって異なると示されています。ほとんどの社会において、働く女性は仕事の責任に加え、男性と比較してより多くの家事などの家庭の責任を負っています。このことは働く女性では仕事と家庭の両立や仕事の継続が困難となる場合が男性に比べて多く、雇用形態と健康の関連における男女差の一因であると考えられます。しかし、これまで雇用形態と健康との関連に家庭の状況を考慮して検討した研究はほとんどありませんでした。


 日本においては、1990年代半ばから働く女性は増加していますが、半数以上がパートやアルバイトなどの非正規雇用者です。先行研究では女性における雇用形態と精神健康や健康行動などの健康指標との関連が示されていますが、死亡リスクとの関連を追跡調査により検証したものはありませんでした。


 そこで、本研究では1988~1990年に詳細なアンケート調査により集められた情報をもとに40~59歳の就労女性16,692人を平均17.7年間追跡調査を行いました。その結果、フルタイム、パート・アルバイト、自営といった雇用の形態が総死亡リスクに影響することを見出し専門誌に発表しましたので報告します(J Epidemiol Community Health. 2015; 69(10):1012-7)。

図1:雇用形態と総死亡リスクとの関連


パート・アルバイトならびに自営業の女性の総死亡リスクは、フルタイム就労女性と比較して高い


 フルタイム就業女性に対して、パート・アルバイト女性の総死亡リスクは1.48倍、自営業の女性は1.44倍でした。 


 女性は働いていても家事や育児の大半を担うことが多く、家事や育児との両立のためパートタイム・アルバイトを選ぶ女性も多い傾向にあります。しかし、こうした就業形態はフルタイムに比べ、勤務の形がより自由に選べる利点がある一方で、福利厚生や労働条件などにさまざまな不利益があり、これが健康になんらかの悪影響を及ぼす可能性が考えられます。


 また、男性の自営業者に見られる仕事上の裁量が大きいなどの利点は、女性の自営業者(多くは従業員としての就労)にはみられないことが多い傾向にあります。また、男性自営業者と比較して女性自営業者の事業規模は小さい傾向もみられることから、女性の自営業者の死亡リスクは男性とは異なりパート・アルバイトと同様に高いのではないかと考えられます。


教育歴や婚姻形態によって雇用形態と死亡リスクの関連は異なる


 また、雇用形態と健康の関連は、女性の置かれている社会経済的状況によって異なることが予想され、女性の社会経済的状況と強い関連が想定される教育歴・婚姻形態による層別解析を行いました。


 その結果、図2で示すように教育歴別の解析では、教育歴の短い群において、雇用形態と死亡リスクとの関連が強く認められました。特に、教育歴が短いパート・アルバイト女性の死亡リスクが高いことがわかりました。

図2:教育歴別にみた雇用形態と死亡リスクとの関連 


 また、婚姻形態別の解析では、非婚者において雇用形態と死亡リスクとの関連が顕著である傾向がみられました。

図3:婚姻形態別にみた雇用形態と死亡リスクとの関連


 日本では女性就労者の割合が年々増加していますが、女性の就労と健康についての検討は多くありません。特に、雇用や家庭の社会経済状況における女性間の格差に注目し、その健康影響を検証した研究はありませんでした。


 今回の研究結果は、雇用の形態が健康に大きな影響を与えている可能性を示しました。また、雇用の形態と健康との関連は、教育歴や婚姻形態など女性の社会経済状況と深く関係する要因によって異なる可能性が示されました。死亡リスクの高いパート・アルバイトや自営業は特に女性の多くが従事している雇用形態です。今後、働く女性が益々増えていくと予想されるなか、雇用の条件や福利厚生面で不利が指摘されているパート・アルバイト就労の健康影響に関するエビデンスやそれに基づく公衆衛生対策の必要性が指摘されます。

copy_rihgt_JACC