テレビ視聴時間と循環器疾患死亡

池原賢代


 生活習慣とがんや循環器疾患による死亡との関係を検討し、日本人の生活習慣病を予防するための方法を明らかにするため、私たちはコホート研究と呼ばれる追跡研究を行っています。コホート研究を行うためには、多くの方の協力をいただき、長い時間をかけて、病気の発生や死亡状況を観察する必要があります。JACC Studyでは現在、全国45地区約11万人の方々にご協力をいただき、1988~90年にアンケートにより集められた情報を基に研究を行っています。今回約19年間(中央値)にわたって追跡し、テレビ視聴時間と循環器疾患死亡との関連について専門誌に発表しました(J Cir. 2015;79:2389-95)。


長時間のテレビ視聴で虚血性心疾患及び全循環器疾患死亡リスクが増加


 1日の平均テレビ視聴時間についての質問に関して有効な回答が得られた85,899人を分析対象としました。テレビ視聴時間は、2時間未満、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間以上の6区分し、2時間未満を基準として脳卒中、虚血性心疾患及び全循環器疾患死亡ハザード比を算出しました。


 その結果、2時間未満に比べて、6時間以上で、虚血性心疾患死亡リスクが33%、全循環器疾患死亡リスクが19%高いことがわかりました(図1)。そして、1日1時間のテレビ視聴時間増加ごとに虚血性心疾患で4%、全循環器疾患で2%の死亡リスクの増加が認められました。


 これらの関連は高血圧や糖尿病の既往を調整すると、虚血性心疾患死亡については統計学的に有意な関連がなくなり、全循環器疾患死亡では関連は有意でしたがやや弱まりました。これらの結果から、テレビ視聴時間と虚血性心疾患や循環器疾患死亡リスクとの関連については、高血圧や糖尿病が中間因子として介在することが示唆されました。


この研究の意義


 テレビ視聴時間は、不活動な余暇時間の過ごし方の一つと考えられており、欧米諸国の先行研究から、テレビ視聴時間と循環器疾患リスクとの関連についてはいくつか報告がありましたが、日本人を対象とした研究はこれまでありませんでした。本研究の結果から、日本人においてもテレビ視聴時間が循環器疾患死亡リスクと関連することが分かりました。テレビ視聴時間などの不活動な生活習慣は、肥満、循環器疾患関連のバイオマーカーの悪化、インスリン抵抗性の増大、糖尿病、高血圧などを誘発し、それらを介して循環器疾患のリスクを増加させるものと考えられます。


 身体活動量の増加は循環器疾患やがんの予防に効果があることがわかっていますので、余暇でのテレビ視聴の時間を減らして、運動の時間に充てることをお勧めします。

図1.テレビ視聴時間と脳卒中、虚血性心疾患及び全循環器疾患死亡リ

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