JACC Studyにおける食パターンと乳がんリスク

小島令嗣


 食事は乳がんリスクに影響する可能性がありますが、先行研究において個々の食品や栄養素と乳がんとの関連についての報告結果は一致していません。さらに2000年以降は、個々の食品や栄養素ではなく、食品の組み合わせである食パターンに着目し乳がんリスクを検討した報告が増えてきました。そのような先行研究によれば、野菜中心の健康的な食パターンは乳がんリスクを低下させ、欧米食パターンはリスクを上昇させることが報告されています。しかしはその結果もまた一致していません。さらに、ほとんどの研究は欧米で行われており、日本で行われた大規模コホート研究はありませんでした。しかし、日本の食習慣は欧米と異なり、かつ世界中でも乳がん発生率が低い国の 1つであることから、日本で食パターンと乳がんリスクとの関連をコホート研究で検討することは大変有意義と考えられます。


 そこでJACC Studyにおいて、1988~90年に全国23地区でアンケートにより食事についての情報を集め、研究にご協力いただいた方を約17年追跡したデータを分析しました。詳しい結果は学術雑誌に発表しておりますが(Breast Cancer 2016 Mar 18. [Epub ahead of print])、ここではその概要をまとめました。


閉経前女性において動物性食品摂取量が多い方で乳がんのハザード比低下がみられました


 アンケートで集めた食事についてのデータをもとに、3つの食パターン(「野菜」、「動物性食品」、「乳製品」パターン)を同定し、各食パターンのスコア別に3つのグループに分けました。その上で、各食パターンスコアが最も小さいグループを1とした乳がんにかかる危険度(ハザード比)を、他の2グループについて計算しました。図のように閉経前女性において「動物性食品」パターンのスコアが高いほど、乳がんの危険度は低くなり、「動物性食品」パターンが最も高いグループ(上位1/3)の乳がん危険度は、スコアが最も小さいグループの0.42倍で、「動物性食品」パターンが高いほど乳がんの危険性が低下する傾向がみられました。一方、他の食パターンおよび閉経後女性では有意な関連はみられませんでした。


 欧米からの報告では、肉類摂取の多い欧米食パターンは乳がんリスク上昇との関係が示されていますが、今回の研究の「動物性食品」パターンは肉だけでなく魚類も多く摂るパターンとなっていたことから、それが結果に影響を与えていた可能性があります。乳がんの発生と食事のとり方との関係を確認するためには、今後もさまざまな国・集団における研究が必要と考えられます。

図 動物性食品を摂る量別にみた乳がん危険度

copy_rihgt_JACC