糖尿病患者の肥満度(BMI)死亡リスクとの関係

久保田康彦


 「肥満は万病のもと」と昔からよく言われますが、そんな常識を覆すような研究結果、つまり、肥満のほうが標準体重より死亡リスクが低い(肥満パラドックス)という結果が欧米を中心にいくつも報告されています。特に、心不全、腎不全、糖尿病患者などでそのような結果がみられ、その真偽について活発に議論がなされています。しかしながら、体格の異なるアジア人に関する報告は少ないのが現状です。


 そこで、本研究では、日本人糖尿病患者における肥満度(BMI)と死亡リスクとの間にどのような関係があるかを分析し、専門誌に発表しました(Journal of Epidemiology誌 2015;25:553-8掲載)。


肥満糖尿病患者(BMI≧25 kg/m2)は標準体重の人より感染症死亡リスクが低下


 アンケートで糖尿病を患っていると自己申告された約4000人の方々を対象に、BMI値で<20.0、20.0-22.9(基準)、23.0-24.9、および≧25.0 kg/m2の4グループに分けて、その後の約20年間に死亡リスク(全死亡、循環器死亡、がん死亡、腎不全死亡、および感染症死亡)がどのように異なるのかを観察しました。


 その結果(下図)、BMIが20.0-22.9 kg/m2 (基準)に比べて、全死亡、循環器死亡、がん死亡、および腎不全死亡はやせている人(BMI<20.0 kg/m2)でリスクが高くなっていました。一方、肥満の人(BMI≧25.0 kg/m2)で感染症死亡のリスクが約50%低下していました(肥満パラドックス)。


この研究の意義


 やせている糖尿病患者の死亡リスクが上がることは過去の研究でも示されていました。しかし、肥満糖尿病患者の感染症死亡リスクが低下することを報告したのは本研究が初めてであり、アジア人でも肥満パラドックスが起こりうることが示されました。この原因は不明ですが、肥満者は一般的に栄養状態がよく感染症に対する抵抗力が高いことが理由の一つと考えられます。


本研究では糖尿病の重症度に関する調査は行っておらず、重症度が本研究結果にどのような影響をおよぼすかは不明です。また、本研究ではみられませんでしたが、欧米でみられるような極端な肥満の人(例えばBMI>40 kg/m2)でも肥満パラドックスが起こりうるかは不明です。

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