獣鳥肉類摂取と循環器疾患死亡

長尾 匡則


 日本人よりも肉を多く摂取する欧米人を対象にした研究では、肉を多く食べると脳卒中や虚血性心疾患による死亡リスクが高くなることが示されています。また、肉を全く食べない菜食主義者では脳卒中や虚血性心疾患の死亡リスクが低いことも報告されてきました。けれども日本人の様に、欧米人ほどではないがある程度の量の肉を食べる場合の影響については、これまで研究されていませんでした。


 そこでこの研究では、日本人の食生活において肉を食べることがどれだけ脳卒中や虚血性失疾患での死亡リスクに影響するかを調べ、専門誌に発表しました(European Journal of Clinical Nutrition誌 66巻687-693 2012年)。


平均的な日本人の肉摂取量では、全循環器疾患の死亡リスクは増加しない


 アンケートで日々の食生活についてお尋ねし、有効な回答が得られた約5万2千人の結果から、肉の摂取量を計算しました。その肉摂取量に応じて、アンケートに答えた人を少ない方から多い方へ5つのグループに分け、その後の約16年間に循環器疾患(脳卒中、虚血性心疾患)で亡くなった人の割合を比べました。


 その結果、肉の摂取量が少ない群でも多い群でも全循環器疾患(脳卒中+虚血性心疾患)で亡くなる人の割合に差はありませんでした。


肥満女性では、肉を一番多く食べる群での虚血性心疾患の死亡リスクが増加傾向


 一方、女性の虚血性心疾患の死亡リスクについては、肥満(BMIが25以上)の人に限定すると、肉を一番多く食べる群で死亡リスクが増加する傾向が見られました。


この研究の意義


 日本人の肉摂取量は戦後増えてきましたが、それでも欧米人に比べて半分以下です。これまでは肉を多く食べる欧米人の結果から、日本人でも肉食は厳に慎むべきものと考えられてきました。しかし今回の結果から、肥満女性を除いて、平均的な日本人の食生活の範囲では肉を摂取しても脳卒中や虚血性心疾患の死亡率を増加させる可能性が低いことが示されました。


 ただし肥満女性では、肉を多く食べると虚血性心疾患による死亡率が高くなる可能性が示されたため、肉の摂取を控えることが勧められます。


最後に


 この研究では一般的な量の肉であれば食べても循環器疾患死亡リスクは変わらないことが示されましたが、がんによる死亡リスクについては検討していません。また、魚を食べた方が循環器疾患の死亡リスクが低いこともJACC Studyの別の研究によって示されています。そのため、肉に偏らず魚も食べる方が望ましいと言えます。

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