血中ビタミンE濃度と循環器疾患死亡

長尾 匡則


 活性酸素などの酸化ストレスは、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患の原因である動脈硬化などを引き起こします。トコフェロール(ビタミンE)には強い抗酸化活性があるので、それら酸化ストレスを除去して循環器疾患を予防する効果が期待されています。トコフェロールにはα、β、γ、δの4種類がありますが、口から食べたものが全て体内で利用されるわけではなく、血液中には主にαとγが存在しています。そのため、循環器疾患の予防の面からは、血液中のαとγのトコフェロール濃度が重要になります。けれども血液中のトコフェロール濃度と循環器疾患による死亡との関連を調べた研究は欧米の男性を対象としたものがいくつかあるのみで、女性に関する研究にいたってはありませんでした。


 そこでこの研究では、血液中のトコフェロール濃度が高いことがどれだけ脳卒中や虚血性心疾患での死亡リスクに影響するかを調べ、専門誌に発表しました。


血中α-トコフェロール濃度が高い女性は脳出血死亡率が低い


 血液の提供に承諾いただいた約3万8千人を対象に、脳卒中や虚血性心疾患で亡くなった方と、その方たちと性別や年齢が同じ方を選びました。そしてそれらの方々の血液中のトコフェロール濃度に応じて、濃度の低い方から高い方へ5つのグループに分け、循環器疾患(脳卒中、虚血性心疾患)で亡くなった人の割合を比べました。


 その結果、脳出血で亡くなる女性の割合は、血液中のα-トコフェロール濃度が高い人では少なかったのに対し、γ-トコフェロールが高い人では多くなる傾向が見られました。これらの傾向は男性では見られませんでした。


なぜ血中γ-トコフェロール濃度が高いと脳出血死亡率が上がるのか


 血液中のγ-トコフェロール濃度が高い方に脳出血で亡くなる方の割合が多い理由として、γ-トコフェロールには血を固まりにくくする作用があることなどが考えられますが、詳しいことはまだわかっていません。


最後に


 この研究では血液中のトコフェロール濃度が循環器疾患死亡リスクに影響することを示しましたが、口から食べたビタミンEが吸収され、血液に入るまでには複雑な段階があり、一概に食べた量が血液中に反映されるわけではありません。そのため様々な食品をバランスよく食べることが循環器疾患予防において重要であると考えられます。

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