日本人における牛乳の飲用頻度と総死亡率との関係

王超辰


 牛乳の飲用と死亡率の関連について西洋人を対象にいくつかの研究が実施されていますが,死亡率の低下と関連するという報告や関連がないとする報告などがあり,研究結果が一致していません.また,飲用する牛乳の量が欧米とは大きく異なる日本人を対象にした研究は,まだ行われていません.


 そこで,日本人を代表するコホート研究であるJACC研究対象者のうち,1988~1990年のベースライン時に40-79歳でがん,心血管疾患の既往歴の申告がなかった94,980人の2009年までの追跡データを用いて,牛乳飲用頻度と死亡率の関連を調べました.そして,その結果を専門誌(Journal of Epidemiology2015年,25巻,66-73ページ)に掲載しましたので,その概要をご紹介します.


牛乳飲用は男性で全死因死亡率の低下と関連


 牛乳を全く飲まない男性に比べて,月に1~2回牛乳を飲用する男性の全死因死亡リスクは有意に低下していましたが,飲用頻度の多さとリスクの低下の度合いには明確な用量反応関係は認められませんでした(図1).一方女性でも,牛乳を全く飲まない場合に比べて,週に3~4回飲用の全死因死亡リスクは有意に低下していました.しかし,飲用頻度がほぼ毎日飲むと多くなるとリスクの低下は逆に有意ではありませんでした.なお,ほぼ毎日飲む人の方が週3-4回飲む人より死亡率がやや高めという傾向は男性でも同様でした.


 次に,死因別死亡リスクについて検討しました.その結果,男性では,牛乳飲用は循環器疾患死亡リスクの低下にもがん死亡リスク低下にも有意に関連していました(図2).しかし女性では牛乳の飲用頻度は,いずれの疾患の死亡リスクとも有意な関連をしていませんでした(図3).


 まとめ: 今回のJACC研究の結果は,日本人において牛乳の飲用が男性では全死因死亡,循環器疾患死亡,がん死亡のリスクの低下と関連すること,女性では週3-4日の飲用が全死因死亡の低下と関連することを示したもので,過去の欧米の報告の多くとも一致しています.ただし,全死因死亡リスクの低下は,男性では月に1~2回の飲用という少ない量から認められており,また飲用頻度が高いほどリスクが低下する用量反応関係も認められませんでした.このことは,牛乳を「飲まない」こと,あるいは牛乳を飲まないことと関連する,今回の調査では調べていないような生活習慣が,死亡リスクを高めていると考えた方がいいのかもしれません.したがって,本研究結果からだけでは牛乳を多く飲むべきかどうかはわからず,今後のさらなる検討が必要と言えます.

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