海藻摂取は甲状腺がん罹患リスクと関連しない

王 超辰


 過剰なヨウ素の摂取によって甲状腺がんに罹患するリスクが上昇する可能性が指摘されています.日本人のヨウ素の主要な摂取源は海藻で,実際日本人のヨウ素摂取量は世界で最も高いと言われています.最近,閉経後の日本人女性において,ほとんど毎日海藻を摂取する人は週1-2回未満に比べ,甲状腺がん罹患リスクが約4倍高かったことが報告されました.しかし,海藻摂取と甲状腺がんリスクには関連がないとする報告もあり,本当に関連があるかどうかは未だ不明です.


 そこで今回, 1988年から2009年末までの追跡データを用いて,日本人中高年(40-79歳)女性における海藻摂取頻度と甲状腺がん罹患リスクとの関係について調べ,専門誌(European Journal of Cancer Prevention 2015年)に発表しましたので概要をお知らせします.


海藻摂取は甲状腺がんリスクと関連しない


 35,687人の女性を,研究開始時に調べた海藻の摂取頻度に基づき,「海藻を週2回未満食べる」,「海藻を週3−4回食べる」,「海藻をほとんど毎日食べる」の3群に分け,各群のその後の甲状腺がん罹患率を比較しました.追跡期間中に94名の方が甲状腺がんになり,その内64名が乳頭がんでした.


 「海藻を週2回未満食べる」の最も摂取頻度が少ない群に比べて,「海藻をほとんど毎日食べる」群の甲状腺がん罹患リスクはほとんど上昇していませんでした(ハザード比1.15, 95%信頼区間 0.69-1.89)(図1).甲状腺がんの中でもとくに,ヨウ素摂取との関連が疑われている乳頭がんだけで検討しても,やはり関連はありませんでした(図2).さらに,日本人における先行研究の結果と比較しやすいように閉経後かどうかで対象者を分けた検討も行いましたが,やはり海藻摂取頻度と甲状腺がん罹患リスクに関連は認められませんでした.


まとめ


 日本人を代表するコホート研究の一つであるJACC研究からは,海藻摂取と甲状腺がん罹患リスクには関連がないことが示唆されました.しかし,本研究では,海藻から摂取されたヨウ素が直接測定されていないため,今回の調査の中で海藻摂取の多い人は必ずしもヨウ素の摂取量が高いでも言えないかもしれません.


 冒頭で述べたように日本人のヨウ素摂取量は,世界で最も高いレベルですが,ほとんどの国民は正常な甲状腺機能を保っていて,またアメリカやオーストラリアなど海藻摂取量の低い国と比べて甲状腺がんの罹患率や死亡率が高い訳でもありません.この事実からだけでも,海藻の摂取と甲状腺がん罹患に強い関連が存在することはあまり考えにくいと言えるかもしれません.

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