日本人男性における喫煙・飲酒習慣と食道がん死亡(その2)

八重樫 由美


 日本での食道がんによる死亡は男性に多く(女性の約5倍)、男性では、すい臓、胆嚢・胆管、肺、肝臓に次いで5年相対生存率が低いがんであることが報告されています。


 食道がんには2つのタイプがありますが、扁平上皮がん(ESCC)は日本を含めたアジアに多く、その危険因子は、多量飲酒、喫煙、野菜・果物の摂取不足、社会経済状況の低さ等があげられています。一方、腺がん(EA)は、欧州諸国に多く、その危険因子は、逆流性食道炎、肥満、喫煙等があります。


 今回の研究では、日本人男性を対象として喫煙習慣、飲酒習慣がそれぞれどの程度食道がん死亡に影響しているのか、また、喫煙・飲酒習慣の相互作用がどのくらい食道がん死亡のリスクとなっているのか、という疑問を明らかにするために、大規模コホート研究において、約20年間の追跡調査を行った結果を専門誌に発表しました。 (Asian Pac J Cancer Prev. 2014;15 (2):1023-9.)


 この研究では、年齢40-79歳、がんの既往歴がなく、喫煙・飲酒習慣のデータが揃っている日本人男性42,408名を1988年から2009年まで追跡し、196名の食道がんによる死亡を把握しました。研究開始時には、アンケートで喫煙習慣ならびに飲酒習慣についてお尋ねしています。


 ●喫煙習慣については、吸わない、過去に吸った、現在吸う、の3群に分け、喫煙者については1日の喫煙本数を1-10本、11-20本、21-30本、31本以上の4群に分け、また、喫煙年数を25年未満、25.1-35.0年、35.1-45.0年、45.1年以上に分けました。喫煙開始年齢については、10-19歳、20-24歳、25歳以上の3群に分けました。


 ●飲酒習慣については、飲まない、過去に飲んだ、現在飲む、の3群に分け、1日の飲酒量を1合未満、1.0-1.9合、2.0-2.9合、3合以上に分けました。また、飲酒年数を25年未満、25.1-35.0年、35.1-45.0年、45.1年以上に分けました。さらに、アルコールの種類(日本酒、焼酎、ビール、ウィスキー、ワイン)についても複数回答で調べました


1)喫煙と食道がんの死亡リスクについて


 たばこを吸わない人に比べて、たばこを吸う人では、食道がんで死亡するリスクが約3.3倍でした。また、たばこを吸わない人に比べて、10歳~19歳の間にたばこを吸い始めた人では、食道がんで死亡するリスクが約4.6倍に上昇しました。20歳から24歳の間に吸い始め人では約3.3倍、25歳を過ぎて吸い始めた人では約2.6倍でした。どの年齢で開始しても食道がんの死亡と関連しており、特に早い時期に吸い始めると食道がん死亡リスクが高まることが分かりました。


2)飲酒と食道がんの死亡リスクについて


 酒を飲まない人に比べて飲む人では、食道がんで死亡するリスクが約2.3倍でした。酒を飲まない人に比べて、1日あたり2合以上3合未満飲む人では、食道がんで死亡するリスクが約3.3倍、3合以上飲む人ではリスクが約4.6倍に上昇しました。また、飲酒年数よりも飲酒量が食道がんの死亡に大きく影響を与えていることが分かりました。


3)喫煙開始年齢と飲酒量の相互作用からみた食道がんの死亡リスクについて


 たばこを吸い始めた年齢と1日あたりの飲酒量の両方から、食道がん死亡にどれくらい影響を与えているかをみてみます。たばこを吸わず、かつ酒を飲まない人に比べて、たばこを吸い、かつ酒を飲む人では、食道がんで死亡するリスクは約2.5倍でした。


 たばこを吸わず、かつ酒を飲まないあるいは1合未満の人を基準にして、食道がんの死亡への影響をみてみますと、1日あたり1~20本たばこを吸い、かつ3合以上の酒を飲む人では、リスクが約4.3倍、1日あたり21本以上たばこを吸い、かつ3合以上の酒を飲む人では、リスクが約6倍上昇しました。10歳~19歳でたばこを吸い始め、かつ1日あたり1合~2合未満の酒を飲む人では、リスクは約6.5倍に、さらに10歳~19歳でたばこを吸い始め、かつ1日あたり3合以上の酒を飲む人では、リスクは約9.3倍に上昇することが分かりました。


今回得られた結果をまとめますと


 1.喫煙と飲酒の相互作用は食道がんの死亡リスクを高めており、特に、たばこを早い時期に吸い始め、かつ1日あたりの飲酒量が多いことが食道がん死亡に大きく影響していることが分かりました。


 2.食道がんの予防には、喫煙しないこと、飲酒量を減らすこと(1合未満)が重要であると考えます。


 3.食道がんへの飲酒・喫煙の影響についての確かな情報を地域、職場等で伝え、また、学校での健康教育を通して、将来喫煙しない環境を整えることが大切であると考えます。

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