血液中インスリン様増殖因子とその関連因子と肝がんの発症リスク

足立 靖


 インスリン様増殖因子(以下IGFと略します)は細胞増殖を刺激することから、がんの発生を促進するのではないかと注目されています。とくにインスリン様増殖因子-1(IGF1)は、これまでの研究で血液中の濃度が高いほど、前立腺がん、乳がん、大腸がんのリスクが高くなることが報告されています。しかし肝がんについての研究はまだ少なく、一致した結果は得られていません。

 そこで、血液中のIGF1、および血液中でIGFと結合しているインスリン様増殖因子結合タンパク質-3(IGFBP3)と肝がんとの関係を調べるため、JACC Study参加者の中で検討を行いました。その結果を学会誌に発表しましたので(Tumour Biology 37巻15125-15132ページ 2016年)ご紹介します。


非結合型IGFBP3の血中濃度が高いと肝がんを発症するリスク(危険)が低くなる


 IGF1とIGFBP3が血液中で結合していると、IGF1の機能は抑えられています。IGF1とIGFBP3は1対1で結合するため、IGFBP3とIGF1の差(IGFBP3-IGF1(モル差))は非結合型IGFBP3の量を反映すると考えられます。

 対照群がほぼ4等分になるよう、血中モル差によって症例群と対照群を4グループに分け、血中モル差が最も小さいグループの肝がん発症危険度を1とした時の、他の3グループの肝がん発症危険度を計算しました。IGF1はIGFBP3と結合するとその細胞増殖刺激作用が阻害されることが分かっていますので、血中モル差が大きいほど、IGF1と結合していないIGFBP3が多く、IGF1の機能を阻害しやすいと考えられます。

 図は非結合型IGFBP3 (IGFBP3-IGF1)と肝がん発症の危険度の結果です。非結合型IGFBP3が多くなるにしたがい、肝がんの発症危険度が低下するという結果でした。非結合型IGFBP3の最も高いグループでは、最も低いグループと比べ、肝がんを発症する危険度が約10分の1に低くなりました。



 IGFBP3はIGF1と結合することにより、IGF1の機能を阻害することから、非結合型IGFBP3が多いと肝がんの発症が抑えられるということは、機能面からみても妥当と考えられました。今後も非結合型IGFBP3の血中濃度と肝がんを発症するリスクについて検討を重ねていく必要があると思われました。

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