体重増加や飲酒と日本人の閉経後女性における乳がんリスクとの関連

新田惇一


 乳がんのリスク要因としては、出産数が少ないこと、初経年齢が低いこと、乳がんの家族歴があること、身長が高いこと、などが報告されていますが、生活習慣の要因として、肥満、飲酒、身体活動不足、なども報告されています。そこで、生活習慣の要因を中心に、身長、20歳頃と比べた体重増加、飲酒習慣、および、身体活動、という4つの要因に着目して乳がんのリスクとの関連を調べ、国際誌(Asian Pacific J Cancer Prev 2016; 17: 1437-1443.)に発表しましたので報告します。特に生活習慣の要因に注目したのは、改善により乳がんリスクを低下させる可能性があるからです。


体重増加、飲酒により閉経後乳がんに罹りやすくなる


 身長、20歳頃と比べた体重増加、身体活動、飲酒という4つの要因と、乳がんのリスクとの関連性をJACC Studyによって検討しました。1988年から1990年までの間に基礎調査を行った38,610人(閉経前女性9,367人、閉経後女性29,243人)を2009年末まで追跡調査しました。その結果、閉経前女性からは84人、閉経後女性からは189人の方が乳がんに罹患しました。


 閉経後女性に発症した乳がんになりやすさをハザード比(その95%信頼区間)という指標を用いて確認したところ、20歳頃と比べた体重増加が3.3kg未満であった人と比べて6.7~9.9kgであった人は2.48(1.40~4.41)倍、10.0kg以上であった人は2.94(1.84~4.70)倍と有意に上昇していました。体重増加に伴う脂肪細胞の増加によって、血中エストロゲン・レベルが上昇する、そして、エストロゲンが乳腺細胞に作用することが乳がんのリスクを高めるといわれています。そのほか、体重増加に伴うIGF-1増加の関与の可能性も疑われています。


 また、飲酒しない人と比べて1日当たりのアルコール(エタノール)摂取量が15.0g以上であった人は、2.74(1.32~5.70)倍と有意に閉経後発症の乳がんのリスクが上昇していました。アルコールを摂取すると、血中エストロゲン・レベルが上昇するといわれています。このエストロゲン上昇が、前述したように乳腺細胞に作用することが乳がんリスクを高めたのかもしれません。そのほか、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドの関与の可能性も疑われています。


 身長や身体活動と閉経後発症乳がんリスクとの間には、有意な関連性はありませんでした。また、今回検討した4つの要因はいずれも閉経前発症の乳がんリスクとは有意な関連性は見られませんでした。


 日本では乳がんに罹る人が増えていますが、生活習慣の改善により閉経後発症の乳がんリスクを低下させることができる可能性が示唆されました。

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