細胞増殖因子と心不全死亡との関係

Ehab S Eshak


細胞増殖は、動脈硬化の進展の重要な過程の一つです。中でも、インスリン様成長因子(IGF)-IやIIは、血管平滑筋細胞の遊走や増殖に関与していることがわかっています。また、IGF結合タンパク(IGFBP)-3は、体内での遊離のIGF-IやIIの量を調節しています。一方、形質転換成長因子(TGF)β1は、血管内批細胞や血管平滑筋細胞の遊走や増殖の調節に関与しています。これまで、これら細胞増殖因子と動脈硬化性疾患との関係については報告されてきましたが、心疾患死亡者において多くを占める心不全死亡との関係については一致した結果は得られていませんでした。そこで、JACC Studyでは、調査開始時に冷凍保存した血液中の細胞増殖因子濃度(IGF-I、IGF-II、IGFBP3、TGF-β1)と心不全死亡との関係について分析を行い、専門誌に発表しました(Journal of Epidemiology. 印刷中)。


血中IGF-II濃度が高いと、心不全死亡リスクが低い


 研究の結果、性別、年齢、体格指数、喫煙・飲酒状況、血圧等循環器疾患の危険因子となる病態の影響を統計学的に除去しても、血中IGF-II濃度が高いと、心不全による死亡リスクが低く、1準偏差あたりの心不全による死亡リスクは0.53倍でした(表1)。一方で、他の細胞増殖因子濃度(IGF-I、IGFBP3、TGF-β1)と心不全死亡のリスクとの関係はみられませんでした。





まとめ


 本研究では、血中IGF-II濃度が高いほど心不全による死亡リスクが低いという関連が示されました。明確なメカニズムについては明らかになっていませんが、IGF-IIを含むインスリン様成長因子は多くの組織の細胞増殖に関与しており、これら因子が高値だと心臓の機能を高めることが関係している等が理由として考えられます。

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