銅、亜鉛摂取と循環器疾患死亡との関係

Ehab S Eshak


酵素に対して補助的な役割をする銅は動脈硬化につながる反応を引き起こし、逆に亜鉛は動脈硬化から血管を保護する働きがあると考えられています。これら微量元素の血中濃度と循環器疾患との関係についての研究は多く実施されていますが、血中濃度は必ずしも摂取量を反映していません。また、銅、亜鉛摂取量と循環器疾患との関係についての疫学研究は少なく、結果も一致していません。そこで、JACC Studyでは、食事についてのアンケートの有効回答が得られた40~79歳の日本人男女58,646名を対象として、これら微量元素摂取量と循環器疾患死亡リスクとの関係を分析し、その結果を専門誌に発表しました。(The Journal of Nutritional Biochemistry. 2018;56:126-132.)。


銅の摂取量が多いと循環器疾患死亡リスクが高い


 通常の食事で使用される40種類の食品からの銅と亜鉛の摂取量(サプリメントや缶詰は除く)を推計したところ、銅の摂取量が多いと循環器疾患死亡リスクが高いことがわかりました。中でも、脳卒中や、脳卒中・虚血性心疾患以外の循環器疾患との関係がより明確に示されました。男性において、銅の摂取量が最も少ないグループに比べ、最も多いグループでは総循環器疾患死亡リスクが1.63倍、脳卒中が1.78倍、脳卒中・虚血性心疾患以外の循環器疾患が1.61倍(図1)、女性では総循環器疾患死亡リスクが1.36倍、脳卒中が1.49倍、脳卒中・虚血性心疾患以外の循環器疾患が1.59倍(図2)でした。





亜鉛の摂取量が多い男性では、虚血性心疾患死亡リスクが低い傾向がある


 一方で、亜鉛の摂取量が多い男性では虚血性心疾患死亡リスクが低い傾向がみられました。亜鉛の摂取量が最も少ないグループに比べ、最も多いグループではそのリスクが0.68倍と統計学的に有意ではありませんでしたが、摂取量が多いほどリスクが低くなる傾向がみられました(傾向性p<0.05)(図3)。なお、女性では亜鉛摂取量と循環器疾患死亡リスクとの関係はみられませんでした(図4)。





まとめ


 本研究において、男女とも銅の摂取量が多いと循環器疾患死亡のリスクが高く、一方で亜鉛に関しては男性のみで摂取量が多いと虚血性心疾患死亡のリスクが低いことがわかりました。銅が多いことが、LDL-コレステロールの酸化や炎症反応等動脈硬化促進と関連した可能性が考えられます。一方で、亜鉛については、LDL-コレステロールの酸化の予防や炎症抑制、インスリン分泌等動脈硬化予防に働いた可能性が考えられます。
平成29年度国民健康・栄養調査によると、亜鉛も銅も共通して米飯が主たる供給源ではありますが、その他に亜鉛は魚介類や肉類からも摂取が多く、銅は大豆や野菜類からの摂取も多いことが報告されています。しかし、これら微量元素に関するエビデンスはいまだ少ないため、今後さらなる研究成果が集積されることによって、これら微量元素のよりよい摂取の仕方が明らかになると考えられます。

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