思春期・成人期における身体活動と循環器疾患死亡の関係:思春期のクラブ活動参加の影響

Krisztina Gero


身体活動と生活習慣病の発症リスクである耐糖能異常、脂質異常、高血圧、肥満などとの関係性については多くの報告があります。一方で、運動不足は心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患のリスクが高くなることに関係し、さらに死亡リスクも増大させることが広く知られています。一方で、中学・高校時代の部活動への参加は日本の習わしの一つとなっています。これまでの研究では運動系部活動への参加と循環器疾患のリスク因子の関連や若年期に積み重ねられたリスク因子がその後のライフステージにおいて循環器疾患罹患・死亡に影響を与えることは明らかになっていたものの、思春期・成人期双方の影響を同時に検討したものは殆どありませんでした。
今回の研究では、大規模コホート研究(JACC Study)を用いて、日本人を約20年間追跡調査し、中学・高校生の時のスポーツクラブへの参加と、成人期の身体活動が、循環器疾患による死亡とどのように関係するかを検討し、その結果を国際専門誌に発表しました(Preventive Medicine, Volume 113, August 2018, Pages 102-108)。


学校のスポーツクラブへの参加者はその後、心血管疾患死亡リスクが低い


 40~79歳の29,526人の男性と41,043人の女性を対象に、1988年から約20年間追跡した結果、2009年末までに4230人の方が循環器疾患(虚血性心疾患:870人 ・脳卒中: 1859人)により死亡しました。循環器疾患の死亡リスクについて、対象者を現在の身体活動量(週5回未満/以上)と、思春期のスポーツクラブ参加の有無により4群に分け、検討を行いました。(「現在週5回未満の運動/思春期にスポーツクラブに不参加」、「現在週5回未満の運動/思春期にスポーツクラブに参加」、「現在週5回以上運動している/思春期にスポーツクラブに参加」、「現在週5回以上運動している/思春期にスポーツクラブに不参加」)。さらに、男女別でも検討を行いました(図1・図2)。

男性では、「現在週5回以上運動している+思春期にスポーツクラブに不参加」だった者に比べて、「現在週5回未満の運動+思春期にスポーツクラブに不参加」だった者で循環器疾患死亡のリスクが高い傾向がみられました(全循環器疾患死亡 1.29倍、全脳卒中 1.49倍)。一方で、「現在週5回以上運動している+思春期にスポーツクラブに参加」した者では、虚血性心疾患による死亡リスクが0.24倍低いことが示されました。(図1) 女性では、「現在週5回以上運動している+思春期にスポーツクラブに不参加」だった者に比べて、「現在週5回未満の運動+思春期にスポーツクラブに不参加」だった者と「現在週5回未満の運動+思春期にスポーツクラブに参加」していた者では、虚血性心疾患の死亡リスクがそれぞれ3.46倍、3.62倍高値を示しました。(図2)





最後に


 運動をすると心血管疾患の予防につながるということは広く知られており、本研究でも身体活動の有効性が示されたと考えられます。さらに、今回の研究では、思春期に学校のスポーツクラブに参加することは、男性の成人期の虚血性心疾患死亡のリスクを低下させる可能性が示されました。これは思春期に学校のスポーツクラブに参加することが、その後の運動や食生活、その他のライフスタイルに長期的な影響を与えることが一因として考えられます。

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