肥満と循環器疾患死亡との関連

崔仁哲


 肥満が循環器疾患などの生活習慣病の原因となることは広く知られています。 我々は文部科学省の助成による大規模コホート研究において、約10年間の追跡調査を行った結果、 肥満と循環器疾患との間に興味深い関連を見出し、その結果を専門誌に発表しました(Stroke 2005; 36: 1377-1382.)。


肥満者で虚血性心疾患の死亡が多い、痩せ過ぎると脳内出血の死亡が多い

 40~79歳の男性43,889人と女性61,039人を約10年間追跡したところ、それぞれ1,707人、1,432人の方が循環器疾患で亡くなられました。

 この研究では、追跡開始時にアンケートで身長と体重をお尋ねしており、それらをもとに 肥満の指標であるBody Mass Index(以下BMIと略します)を計算しました(体重(Kg)を身長(m)の2乗で割ることにより求められます)。 BMIが18.5未満、18.5以上21.0未満、21.0以上23.0未満、23.0以上25.0未満、25.0以上27.0未満、27.0以上の6つの群に分け、 死亡率が最も低かったBMIが23.0以上25.0未満のグループ(正常体重のうちやや太り気味の群)の死亡率を1として他のBMI群の循環器疾患による死亡率と比べました(図1,2)。

 BMI27.0以上の群では虚血性心疾患の死亡が多く、 男性ではBMIが23.0以上25.0未満群にくらべ、2.1倍、女性では1.6倍でした。

 また、BMIが18.5未満のやせの群では脳内出血の死亡が多く、 男性ではBMIが23.0以上25.0未満群にくらべ2.0倍、女性では2.3倍でした。これらの関連はもともと病気のあった可能性のある追跡開始から 5年未満の死亡者を除いても、あるいは喫煙の有無にもかかわらずみられました。


 今回の研究により、循環器疾患による死亡が最も少ないのは、いわゆる理想体重(BMI=22kg/m2)よりも やや多いBMIが23~25kg/m2の群であること、太りすぎだけでなく、やせすぎの場合でも循環器疾患による死亡が多くなることがわかりました。

【図1】BMIと虚血性心疾患の死亡

【図2】BMIと脳内出血の死亡


なぜ肥満・痩せ過ぎが循環器疾患を増やすのか?

 肥満によりインスリンホルモンが効きにくい状態となるため高脂血症、高血圧、糖尿病をひきおこし、 そのため虚血性心疾患になり易くなると考えられます。逆に痩せすぎると内皮細胞の機能低下や血清総コレステロールの低値等により、 血管壁が破れやすくなり、脳内出血を起こしやすいと考えられています。 肥満・やせすぎともに循環器疾患の死亡が多くなるという研究は、欧米でも報告されていますが、 今回の研究により日本人でも同じ傾向が確認されました。

copy_rihgt_JACC