早期の閉経と虚血性心疾患死亡との関連

崔仁哲


 早期の閉経により虚血性心疾患のリスクが増加することは白人女性の研究で報告されていました。われわれは文部科学省の助成による大規模コホート研究において、日本人を約10年間追跡調査し、その結果を日本疫学会会誌2006年9月号に発表しました(J Epidemiol 2006; 16:177-184)。


早期の閉経者で虚血性心疾患の死亡が多い

 1988年から1999年末まで、40~79歳の37,965人の閉経後女性を約10年間追跡したところ、 487人が全脳卒中で、178人が虚血性心疾患で亡くなりました。


 この研究では、追跡開始時に既に閉経されている方に対し閉経年齢をお尋ねしており、閉経年齢が44歳未満、44以上47歳未満、47以上49歳未満、49以上51歳未満、51歳以上の5つの群にわけ、死亡率が最も低かった閉経年齢が51歳以上の群の死亡率を1として他の群の虚血性心疾患による死亡率を比較しました。


 調査開始時の年齢が40-64歳の閉経後女性では、閉経年齢が51歳以上の群に比べ、閉経年齢が49歳未満の各群で虚血性心疾患の死亡リスクは1.5倍以上でした。調査開始時の年齢が65-79歳の閉経後女性においては早期閉経と虚血性心疾患の死亡との関連は認められませんでした。

【図1】閉経年齢と虚血性心疾患死亡


なぜ早期の閉経により虚血性心疾患が増えるのか?

 閉経により身体内の女性ホルモンが急に低下し、血清総コレステロール特に悪玉コレステロールといわれるLDL-コレステロールが高くなります。また、女性ホルモンが低下することにより腹部内臓肥満を起こしやすくなり、血糖、血圧、中性脂肪が高くなったり、善玉コレステロールといわれるHDL-コレステロールが低くなったりします(メタボリックシンドローム)。そのため、虚血性心疾患を起こしやすくなるものと考えられています。


 早めに閉経された女性は、虚血性心疾患の予防のためにも、血清総コレステロール、中性脂肪、血糖や血圧が高くならないように、食生活に気をつけ、運動不足にならないように心がけましょう。食生活に関しては、肉の脂身、バター、卵黄、間食等のとりすぎに特に注意しましよう。

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