米摂取量と循環器疾患死亡リスクとの関係について

Ehab S Eshak


 米は日本の主食であり、日本人の炭水化物の43%、エネルギー摂取量の29%を米が占めています。欧米からは炭水化物摂取量が多いほど、循環器疾患発症リスクが高いという研究報告がありますが、日本人を対象とした研究では、明確な関連はみられていません。そこで私たちは、文部科学省が助成する大規模コホート研究JACC Studyに参加し、食事についてのアンケートの有効回答が得られた40~79歳の日本人男女83,752人を対象として、米摂取量と循環器疾患死亡リスクとの関係を分析したその結果を専門誌に発表しました。(Journal of Nutrition. 2011;141:1-8)


男性では、米摂取量が高いと循環器疾患死亡リスクが低い

 男性では、米の摂取量が高いと虚血性心疾患、心不全並びに全循環器疾患死亡リスクが低いことが示されました。この関係は、循環器疾患危険因子の影響を統計学的に調整した後も、変わりませんでした(図1)。一方、女性では米摂取量と循環器疾患死亡リスクとの間に有意な関係は見られませんでした(図2)。また、対象者のBMIによって分けて解析を行った結果、BMIが21.4kg/m2以下の男性(やせ型)よりも、23.5Kg /m2より多い男性(やや太目)で、米摂取量が多いと全循環器疾患死亡リスクが低くなる関係がみられました。


まとめ

 日本人男性において、米摂取量が高いと虚血性心疾患、心不全と全循環器疾患による死亡リスクが低いことが示されました。しかしながら、女性ではその傾向は見られませんでした。 米は日本人にとって、ビタミンB6や食物繊維の主要な供給源です。これらの栄養素は心疾患の発症に予防的に働くことが示唆されており、今回の結果もこれらの栄養素の働きで一部説明できると考えられます。


 男女で結果が一致しなかった理由として、男性と女性とでは、低脂肪・高炭水化物食を摂取したときの血中脂質の変化に違いがあることがあげられます。米のような低脂肪・高炭水化物食を食べると、女性のほうが男性よりも、血中の中性脂肪やVLDL(超低比重)コレステロールがより上昇し、HDLコレステロールがより低下することが報告されています。このような変化は心疾患死亡リスクを上げることから、女性では米に含まれるビタミンB6や食物繊維による予防効果が相殺されてしまった可能性が考えられます。

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