喫煙と胃がん死亡との関係

藤野善久


 これまでに喫煙が胃がんの死亡や罹患を増やすことは報告されています。日本で実施された複数の追跡研究においても、喫煙と胃がんの関係は一貫して認められています。


 胃がんは環境要因、特に食事要因が強く影響していることが示唆されていますが、これまでの追跡研究では地域が限定されていたり、研究が実施されたのが1960年代であったなど、近年の日本の環境・食生活の変化を十分に反映していません。


 そこで、日本を広く網羅した本研究において、喫煙が胃がんに与える影響を評価しました。本研究は2005年に専門誌に公表されました(Journal of Epidemiology 15巻 Supple II S113-S118)。その概要を報告します。


男性喫煙者の胃がん死亡は1.3倍

 喫煙の状況をアンケートでお尋ねしています(非喫煙者、過去喫煙者、喫煙者)。さらに過去喫煙者と喫煙者については1日に吸う本数および喫煙年数も調べています。男性の喫煙者は、非喫煙者に比べて胃がんで死亡する確率は1.3倍でした。過去喫煙者は1.2倍でしたが統計学的にははっきりした関連ではありませんでした。


一日の吸う本数が15本以下でも胃がん死亡は増加

 男性喫煙者では、一日にタバコを吸う本数が増えると、胃がんで死亡する確率が高くなりました。タバコを吸わない人に比べると一日にタバコを15-24本を吸う人は、胃がんの死亡が1.4倍、35本以上吸う人は1.6倍でした。また、1日のタバコを吸う本数が15本以下の喫煙者でも、有意ではないものの胃がんの死亡は1.3倍と上昇していました。


1日に吸う本数×喫煙年数」が400以上で胃がん死亡は増加

 生涯にどれくらいタバコを吸ったかを調べる指標に「1日に吸う本数×喫煙年数」というものがあります。これが400以上の男性喫煙者では、胃がん死亡が1.3倍以上でした。


 日本広域で実施された本研究においても、喫煙が胃がん死亡に強く関連していることが示されました。胃がんの原因としては、食生活を含めた環境要因の影響が指摘されていますが、高塩分食、ヘリコバクターピロリ菌感染以外には、胃がんの有力な危険要因はいまだはっきりしていません。そのなかで、日本国内の胃がん罹患・死亡が高いレベルにあること、また、日本の喫煙率が先進国の中で依然高いことを考慮すると、喫煙が胃がん死亡に強く関連していることを示す本研究の結果は公衆衛生学上、重要です。


 さらに、本研究では比較的少ない喫煙量でも胃がん死亡を増加させていたことを示しました。このことは胃がん予防対策上において、禁煙は喫煙本数に関わらず強く推奨されることを強調しています。

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