雇用状態と循環器疾患死亡との関係

藤野善久


 社会経済的状況、特に職種による健康状態の格差は諸外国において報告されてきました。特に循環器疾患は職業階級と強く関連することが知られています。


 職種を比較する方法として、職業階級、専門職/非専門職、事務仕事/肉体労働などがよく報告されています。しかしながら、雇用状況(勤務 / 自営)による健康リスクの差異について検討はあまりなされていません。


 本研究では、国内の労働者において勤務者と自営業者との循環器疾患による死亡を比較し検討しました。本研究は専門誌J Occup Health, 47巻, 510-7項、2005年において発表されました。


勤務者と自営業者で全死亡に関連なし

 調査開始時点で働いている方を対象に、勤務か自営業かを尋ねています。全死亡については男女とも勤務者と自営業者では違いはありませんでした。


勤務者は自営業者よりも高い脳血管死亡リスク

 男性自営業者の脳血管死亡リスクは勤務者に比較して有意に低く、0.6倍でした。この結果は年齢、喫煙、飲酒、教育歴、BMI(肥満度の指標 体重/身長2)、高血圧既往、糖尿病既往、ストレスなどの影響を統計的に考慮しても変わりませんでした。自営業者でリスクが低い傾向は、女性においても同様に認められ、0.5倍となりました。

【図1】勤務者と自営業者の比較(死因別)


 自営業者の脳血管死亡が勤務者より少ない理由は明らかではありませんが、ストレスの関与などが考えられます。職業上のストレスは脳血管障害の独立した危険要因になることが明らかになっています。 勤務者と自営業者では、ストレスの感じ方が大きく異なるであろうことは容易に想像されますが、本研究においても結果として脳血管死亡のリスクに差があることが確認されました。


 今回の結果は、雇用状況によるストレスの違いが勤務者の脳血管死亡リスクの増加につながった可能性を示していると考えられます。

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