大規模コホート研究からみた緑茶の胃がん予防効果

星山佳治


 緑茶の胃がん予防効果について、日本全国45地域の一般住民を対象として解析しました。この研究では、1988~90年に総数127477人(男54032人、女73445人)から情報を集め、追跡調査により胃がんで死亡した人を確認しています。1997年12月31日まで追跡し、平均追跡期間は約8年間でした。


 今回の解析対象は、情報を集めた時点で40歳~79歳かつお茶の摂取について質問がなされた地域に限定したため、男30370人、女42481人となりました。この中で胃がんで死亡した人は、男240人、女119人でした。解析は、緑茶の飲用を5カテゴリに分類し、1杯未満/日を基準として、1-2杯/日、3-4杯/日、5-9杯/日、10杯以上/日の人の胃がん死亡のリスクを求めました。なお、この研究結果は専門誌に発表しています (British Journal of Cancer 87巻 309-313ページ 2002年および British Journal of Cancer 90巻 135-138ページ 2004年)。結果の概要を報告します。


緑茶の飲用と胃がん死亡とは関連がみられなかった。

 1988年に古野らは、北九州で胃がんの症例対照研究を行い、1日10杯以上の緑茶の飲用が、胃がんに予防的であると報告しました。その後、動物実験でもこれを支持する結果が出てきたため、さらにいくつかの研究が行われました。その中には緑茶が予防的とする報告もありましたが、そうでないものもありました。今回の研究結果では、緑茶の飲用と胃がん死亡とは関連がみられず、1日何杯緑茶を飲もうとも、その後の胃がん死亡とは関係がありませんでした。


緑茶の大量飲用は胃がん死亡に予防的か?

 2001年になって、坪野らは宮城県で行った胃がんの罹患をエンドポイントとするコホート研究を発表しましたが、緑茶の予防効果は観察されませんでした。この研究はそれまでの研究よりも方法論的に優れていたことから、緑茶の効果に疑問が投げかけられました。ただし、この研究では緑茶の飲用の最大カテゴリは5杯以上であったため、10杯以上飲む場合の効果はわからず、非常にたくさん飲めばよいのではないかという疑問もありました。今回の研究では、緑茶を1日10杯以上飲むという大量飲用者についても調べましたが、大量に飲んでも胃がん死亡に対して予防的には働かないという結果が観察されています。


ピロリ菌との関係はどうなっているの?

 ヘリコバクテリア・ピロリ菌に感染している人は、そうでない人より2倍くらい胃がんになるリスクが高いといわれています。もし、ピロリ菌に感染している人ほどよく緑茶を飲むとすれば、例え緑茶に胃がんを予防する効果があるとしてもその効果がピロリ菌感染によりマスクされて見えなくなってしまうことが考えられます。


 そこで、同じ研究集団の中から血液サンプルを採取した人を対象として、ピロリ菌の感染も考慮した研究も行いました。


 その結果、ピロリ菌の感染と緑茶の飲用とは無関係であることがわかりました。つまり、ピロリ菌の感染を考慮した研究結果でも、緑茶を飲むことが胃がんのリスクを下げるという結果は見られませんでした。とはいえ、もちろん緑茶を飲んだからといって胃がんに罹りやすくなる心配はありません。緑茶の胃がん予防効果は、肯定的な研究と否定的な研究があり、いまだ結論がでない状態といえるでしょう。

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