緑茶摂取の口腔がん予防効果

井手玲子


 緑茶に含まれるポリフェノールは抗酸化作用およびアポトーシス(細胞の自然死、個体をより良い状態に保つために必要)をおこすことから、緑茶のがん予防効果が期待されています。加えて、口の中の不良な入れ歯、金属の冠や歯の尖っている部分による慢性的な刺激は、口腔がんの原因とされていますが、緑茶中のフッ素やカテキンにむし歯や歯周病の予防作用があるという報告もあります。そこで、緑茶の直接的な効果とむし歯や歯周病の予防による間接的な効果により、緑茶の摂取は口腔がんの発生に予防的に働くのではないかと考えました。


 今回、1988~1990年に全国20地区で緑茶の摂取やその他の質問項目に回答された男性20,550名、女性29,671名について約10年追跡したデータを分析し、学術雑誌(Annals of Epidemiology 17巻 821-826ページ 2007年)に発表しました。ここでは、その概要を紹介します。


緑茶摂取と口腔がんに明らかな関連はなかったが、女性では1日5杯以上飲む人に危険度低下傾向がみられました

 緑茶摂取についてのアンケートの答えから、「1日1杯未満」、「1-2杯」、「3-4杯」、「5杯以上」の4つのグループに分けました。そして、「1日1杯未満」を1とした場合の「1-2杯」、「3-4杯」、「5杯以上」のそれぞれの危険度(相対危険度)を男女別に計算しました。危険度は、口腔がんに影響する可能性がある要因(年齢、飲酒、喫煙、およびコーヒー、緑黄色野菜、塩辛い食べ物、果物の摂取状況)を考慮して計算しています。その結果、図のように、女性で緑茶を1日5杯以上飲む人は口腔がんの危険度は0.31倍で緑茶摂取の口腔がん予防効果の可能性が示されました。一方、男性ではそのような傾向は明らかではありませんでした。


 今回の研究のように一般の人々を対象とした緑茶と口腔がんについての大規模な研究は、今までほとんどなく、予防効果を示唆する結果は重要な所見といえます。今後、さらに緑茶の口腔がん予防効果を確認するためには、日本のように緑茶を飲む習慣がある国で、もっと多数を対象とした研究や私たちの研究の追跡期間を延長していくことが必要と考えられます。

copy_rihgt_JACC