睡眠時間と循環器疾患死亡

池原賢代


 生活習慣とがんや循環器疾患による死亡との関係を検討し、日本人の生活習慣病を予防するための方法を明らかにするため、私たちはコホート研究と呼ばれる追跡研究を行っています。コホート研究を行うためには、多くの方々の協力をいただき、長い時間をかけて、病気の発生や死亡状況を観察する必要があります。JACC Studyでは現在、全国45地区約11万人の方々にご協力をいただき、 1988~90年にアンケートにより集められた情報を基に、研究を行っています。今回、約15年間追跡をした結果、睡眠時間と循環器疾患及びその他の死亡との間に関連ついて、専門誌に発表しました(Sleep誌 2009;32:295-301掲載)。


長時間睡眠、短時間睡眠ともに男女で循環器疾患及びその他の死亡と関連

 睡眠時間が10時間以上の長時間睡眠は、7時間の睡眠に比べて、男性の全脳卒中死亡で1.7倍、脳梗塞死亡で1.6倍、全循環器疾患死亡で1.6倍、循環器疾患及びがん以外の死亡で1.7倍、全死亡で1.6倍と死亡リスクが増加しました。女性でも全脳卒中死亡で1.7倍、脳梗塞死亡で2.4倍、全循環器疾患死亡で1.5倍、循環器疾患及びがん以外の死亡で2.0倍、全死亡で1.6倍と、男性同様に死亡リスクの増加が認められました。


 一方、4時間以下の短時間睡眠は、7時間睡眠に比べて、女性で虚血性心疾患の死亡リスクが2.3倍、循環器疾患及びがん以外の死亡リスクは男女ともに1.5倍、全死亡リスクは男女ともに1.3倍と、死亡リスクが増加しました。


この研究の意義

 欧米では、長時間睡眠や短時間睡眠と全死亡、循環器疾患死亡、その他の死亡との関連がいくつか報告されています。 JACC Studyでもこれまでに睡眠時間と全死亡との関連を報告しています(玉腰, Sleep 2004;27:51-54)。しかし、日本人を対象に短時間及び長時間の睡眠と脳卒中及び虚血性心疾患死亡との関連を報告した研究はほとんどありませんでした。


 短時間の睡眠が循環器疾患の死亡リスクを増加させるメカニズムとしては、交感神経の亢進、血圧値の上昇、コルチゾール分泌や炎症反応の亢進、耐糖能異常の亢進などが考えられています。一方、長時間の睡眠については、疾患を引き起こす原因ではなく疾患の症状の一つである可能性も考え、メカニズムの解明のためにはさらなる研究が望まれます。

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