自覚的ストレスと循環器死亡

磯博康


 生活習慣とがんなどの病気の発生や死亡との検討し、日本人の生活習慣病を予防する方法を明らかにするため、私たちはコホート研究と呼ばれる研究行なっています。コホート研究行なうためには多くの皆様のご協力をいただき、長い時間をかけて、病気の発生や死亡状況を観察する必要があります。現在、全国45地区、約11万人の方々にご協力をいただき、1988~1990年にアンケートにより集められた情報を元に研究を行なっております。約10年間追跡調査を行なった結果、自覚的ストレスと循環器疾患との間に興味深い関係を発見し、専門誌に発表いたしました(Circulation 106巻1229-1236 2002年)。


自覚的ストレスが多いと循環器疾患による死亡が多くなる

 アンケートで「日常ストレスが多いと思われますか」という質問をお尋ねし、ストレスの強さごとにその後循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞)で死亡した人の割合を比べました。


 図は自覚的ストレスが少ない人を基準としたときの死亡のおこりやすさの割合を示しています(循環器疾患の死亡はストレス以外のさまざまな要因の影響を受けるので、それらの影響を考慮して計算しました)。ストレスが多い人は少ない人に比べて、脳卒中や心筋梗塞になりやすいことがわかりました。その程度は、女性では、ストレスが多い人では脳卒中が2.2倍、心筋梗塞が2.3倍です。また、女性では自覚的ストレスが多くなるほど脳卒中、心筋梗塞になりやすくなることが示されました。男性ではそれらの傾向は女性ほど強くありませんでしたが、心筋梗塞ではストレスとの関係が示されました。

【図1】自覚的ストレスと脳卒中・心筋梗塞の死亡


なぜストレスが循環器疾患を増やすのか?

ストレスが多くなると・・・
1)交感神経の活動が亢進し、血圧や心拍数が上がる
2)耐糖能やインスリン感受性が低下する
3)血管攣縮(けいれん)が起こる
4)血小板凝集能が上がる
5)内皮細胞の機能低下が起こる
など体の中で変化が起きると考えられています。 そのため、ストレスが多くなると、それらのメカニズムによって脳卒中や心筋梗塞が起こりやすくなると考えられています。


この研究の意義

 ストレスが多くなると心筋梗塞が多くなるという研究は、今までに欧米でも報告されていますが、ストレスと脳卒中死亡の関連を示したのは、本研究が初めてです。

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