喫煙と循環器疾患死亡との関連

磯博康


 喫煙がどの程度循環器疾患死亡に影響しているのか、禁煙をすることでその死亡リスクを減らすことができるのか、という2つの疑問を明らかにするため、文部科学省の助成する大規模コホート研究において、約10年間の追跡調査を行った結果をまとめ、専門誌に発表しました( Am J Epidemiol 2005; 161: 170-179.)。


喫煙により循環器疾患の死亡が多くなるが、禁煙によりその影響が少なくなる

 40~79歳の男性41,782人と女性52,901人を約10年間追跡したところ、それぞれ1,555人、1,155人の方が循環器疾患で亡くなられました。


 この研究では、追跡開始時にアンケートで喫煙状況をお尋ねしています。喫煙状況を吸わない、過去吸った、現在吸う(毎日20本未満、20本以上)に分け、また、過去に吸った方では禁煙年数を0-1、2-4、 5-9、10-14、15年以上に分けました。


 現在吸う群では、吸わない群にくらべ循環器疾患の死亡が多く、男性では脳卒中の死亡が1.4倍、虚血性心疾患の死亡が2.5倍、全循環器疾患の死亡が1.6倍、女性ではそれぞれ1.7、3.4、2.1倍でした。また、禁煙された方では虚血性心疾患と全循環器疾患の死亡は2年以内に、脳卒中の死亡は2-4年以上禁煙すると低下しました。虚血性心疾患、脳卒中いずれも10―14年以上禁煙を続けていらっしゃる場合には、喫煙による影響はほぼなくなりました(図1,2)。


なぜ喫煙が循環器疾患を増やすのか?

 たばこを吸うと、血漿フィブリノーゲンなど血液中の凝固因子の濃度が増加すること、血球容量比が増加することより血液が固まりやすくなります。また、長い期間たばこを吸うことにより、血管内皮細胞が障害され、善玉といわれるHDLコレステロール値が低下し、動脈硬化が進みます。これらのメカニズムが重なって、喫煙者は循環器疾患になりやすいと考えられます。しかし、禁煙することにより、上記の各機能が回復し、循環器疾患予防につながります。

【図1】喫煙習慣と循環器疾患の死亡

【図2】禁煙と脳卒中・虚血性心疾患・循環器疾患の死亡


 喫煙と虚血性心疾患の関係は、欧米やアジア各地でも広く報告されていますが、脳卒中との関連は弱くまたアジアではその結果は必ずしも一致していません。この研究により、喫煙と脳卒中を含む循環器疾患との関連が明らかになり、禁煙は循環器疾患の予防に重要であることが示されました。

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