緑茶及びコーヒーの飲用と2型糖尿病リスクとの関連

磯博康


 欧米諸国におけるいくつかのコホート研究では、カフェインが豊富に含まれるコーヒーの飲用と、糖尿病リスクの減少の関連が報告されています。しかし、欧米諸国で多く飲用されている紅茶と糖尿病リスクとの関連については未だ不明確であり、アジア諸国で多く飲まれている緑茶やウーロン茶に影響については、検討されていませんでした。


 近年、日本人における糖尿病の罹患率は増加傾向にあります。一方、日本人においては、約8割の人が、1日2杯以上の緑茶を飲んでいます。そこで、緑茶の飲用と2型糖尿病リスクとの関連について、文部科学省が助成する大規模コホート研究(Japan Collaborative Cohort Study)において、5年間の追跡調査を行なった結果をまとめました(Ann Intern Med 2006; 144: 554-562)。


 本研究では、ベースライン時に糖尿病、心疾患、がんの既往歴のない40‐65歳の17413名(男性6727名、女性10686名)を分析の対象とし、質問票によるコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶の摂取状況と、糖尿病の診断有無に関するデータを用い、分析を行ないました。


緑茶・コーヒー飲用が多いもので糖尿病罹患リスクが低下

 5年の追跡調査の間に、444名の糖尿病の発症を申告した者(男性231名、女性213名)がありました。この間の糖尿病の発症リスクは、緑茶週1杯以下の飲用者と比べ、1日6杯以上の飲用者では0.67倍、コーヒー週1杯以下の飲用者と比べ、 1日3杯以上の飲用者では0.58倍であり、糖尿病罹患リスクと緑茶及びコーヒー飲用との間に有意な負の関連が認められました(図1)。


 また、総カフェイン摂取量により5グループに分けて分析をした結果では、図2に示すように総カフェイン摂取量が最も低いグループ(中央値57mg/d)に対し、最も高いグループ(中央値416mg/d)では糖尿病罹患リスクが0.67倍と、そのリスクが33%低い結果となりました。特に、BMIが25kg/m2以上の者では、その傾向が顕著でした(図3)。


 メカニズムとして、緑茶やコーヒーに豊富に含まれるカフェインは、基礎代謝の促進、筋肉における脂肪燃焼、グリコーゲンの異化、末梢組織からの遊離脂肪酸の放出を促すことが知られており、カフェイン飲用により糖尿病を発生しにくい状態が作り出されると考えられます。また、緑茶に含まれているエピガロカテキンガレート、コーヒーに含まれているクロロゲン酸は、抗酸化作用により、インスリン抵抗性の改善が期待されます。


 今回の追跡調査により、緑茶及びコーヒーの飲用、そしてカフェイン摂取が、糖尿病の発症リスクを減少させる可能性があることが示されました。特に、BMIが25 kg/m2以上の肥満者では、カフェイン摂取と糖尿病の発症リスクの低下との関連が強く認められました。

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