大腸がんとC-反応性蛋白

伊藤 宜則


はじめに

 C-反応性蛋白(CRP)は、肺炎患者の血清から見出され、細菌感染や組織損傷などが生じた急性炎症時に血清内で上昇する炎症マーカーの一つとして診断等に利用されています。最近、CRPが微量しか存在しない場合でも検出できる測定(高感度CRP測定)法が開発され、急性炎症に限らず、心筋梗塞、脳梗塞など慢性炎症時の診断応用にも活用されるようになりました。


 大腸がんは、動物性食品類の摂取増加など食生活の欧米化に伴い、現在は、肺がんと共に増加が心配される「注目されるがん」の一つです。大腸がんの発生に慢性炎症が関与する可能性を疑う報告もあることから、早期の大腸がんの発見とその予防に資するため、今回、微量血清CRP値と大腸がんとの関連について検討を試みました。(J Epidemiol, 2005;15:S185-S189)


大腸がんと微量血清CRP量

 大腸がんは、盲腸、結腸、直腸のがんの総称であり、細かく見た場合、個々の危険因子は必ずしも一致しないことも知られています。

 今回のJACC Studyの調査では、大腸がん(死亡と罹患:大腸がんと診断された患者)症例の141名(男性:63名、女性:78名)に対して、がんが認められなかった生存者から地域、性、年齢を一致させた対照例327名(男性:148名、女性:179名)を選出しました。調査対象者の微量血清CRP値を対照群の人数がほぼ均等になるように3群に分け、低値群の大腸がんの危険度(リスク)を1.0として、血清CRP値の高い群におけるそれぞれの大腸がんのリスクの比較を行いました。下図に見られますように、血清CRP値の高い者では、大腸がんのリスクが若干高く、特に、結腸がんでは、血清CRP値が最も高い群で、低い群に比較して1.4倍程度高い成績が示されました。


まとめ

 大腸がんは、植物繊維の多い野菜類摂取などの食習慣や運動習慣等が関連するといわれているほか、最近、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:アスピリン、インドメタシンなどの薬剤)が大腸ポリープ発生の抑制や大腸がん予防に働く可能性も示されています。今回の調査では、慢性炎症の一マーカーとされる微量血清CRP値の高い者で、特に、結腸がんのリスクが高いことが推計されました。したがって、微量血清CRPが高値を示すような慢性炎症状態は、心筋梗塞などの循環器疾患と同様に、大腸がんそのものあるいはその発生の危険信号として、予防診断への応用の可能性が示唆されました。

【図1】大腸がんとCRP

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