食品中のマグネシウム摂取による糖尿病予防効果

桐井恭子


 マグネシウムは、体内のインスリン伝達や糖代謝に重要な役割を果たしています。そのため、マグネシウムと糖尿病との関連について、 今まで数多くの基礎的研究がされてきました。 海外では、人を対象として食品に含まれるマグネシウムと糖尿病発症リスクとの関連を検討した報告がいくつかありますが、 日本人を対象とした研究はありませんでした。


 今回、1988-1990年に日本全国の45の地域において、食生活やその他の質問項目に回答された男性6,480名、 女性28,119名について、約5年間の追跡調査を行いました。 そして、マグネシウム摂取量と糖尿病発症との間の関連を分析し、専門誌に発表しました。 (J Am Coll Nutr 2010; 29: 99-106)  公表されている研究成果へ


マグネシウム摂取量が多いと糖尿病発症リスクが低い

 食生活の調査は、33の食品について、その摂取頻度(ほとんど毎日食べる、1週間に3-4回、1週間に1-2回、 1ヵ月に1-2回未満、ほとんど食べない)を尋ねました。 その結果を用いて、マグネシウムの1日当りの摂取量を算出し、4つのグループ分けを行って、 糖尿病発症リスクとの関連を調べました。


 追跡期間中に男性237人、女性222人が新たに糖尿病を発症したと回答しました。 糖尿病発症のリスクを男女別および全体について、糖尿病発症に関係する年齢、喫煙状況、エタノール摂取量、 糖尿病家族歴、肥満などの影響を統計学的に調整して分析しました。


 その結果、全体の解析において、マグネシウム摂取量が1番多いグループ(中央値303mg/日)では、 1番少ないグループ(中央値158mg/日)と比べて、糖尿病のリスクが約36%低いことがわかりました(図1)。 男性、女性別にみても、同様の傾向がみられました。


 また、肥満の指標の一つであるBody Mass Index(以下BMI:体重(kg)/身長(m)2)が25未満、 25以上の2グループに分けてマグネシウム摂取量と糖尿病発症との関連を調べた結果、 BMIが25以上のグループにおいて上記の関連が強くみられました。


 今回の研究結果から、食品中のマグネシウムの摂取により、糖尿病の発症リスクを低減させ得る可能性が、日本人を対象としては初めて示されました。

 マグネシウムは、日本人の食事では穀類、野菜、豆類、魚など、食物全般から摂取されていますので、糖尿病予防の観点からバランスの良い食事、加工食品などに頼り過ぎない食生活が推奨されます。

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