親のがんは子どものがん発症の可能性を高めるか?

近藤高明


 父親または母親にがんがあったら自分もがんになるのではないかという不安は、誰もが抱くものです。実際、これまでの多くの研究で、親のがんは子のがん発症の可能性を高めるという、「がんの集積」が確認されていますが、その説明として、ひとつには遺伝的な影響が考えられます。


 しかし、親子では食事や生活様式などの環境面での共通点が多いことも影響しているようです。ところでひとくちに「がん」といってもおかされる臓器によって、親子間での集積の強さには大きな違いがあります。私たちは全国45か所、約11万人の方々のデータを用いて臓器ごとの親子でのがん集積の強さを比較しましたので、その概要を報告いたします(Int J Epidemiology 32巻579-83頁、2003年)。


親にがん病歴がある場合の子のがんリスクは2倍に上昇

 少なくとも両親のいずれかになんらかのがんの病歴がある場合、子どものだれかががんに罹患する確率はどの程度上昇するのかをみてみました。その結果、両親のいずれにもがん病歴がない場合と比較すると約2倍のリスク上昇が見られました。


臓器ごとにみてもがんの集積があります

 少なくとも両親のいずれかに胃がんの病歴がある場合、子どもの胃がんリスクは約2.5倍の上昇となりました。また大腸がんでは約4倍、肝臓がんでは約5倍と、いずれの臓器も両親のいずれかに病歴がある場合はない場合に比べ高いリスクの上昇を示しました。これらのがんの発症には遺伝的影響だけでなく、親子で共有する生活様式の影響があいまって作用していることが考えられます。


肺がんは親子の間で集積がありません

 親の肺がんと子の肺がんとの間には関連がありませんでした。言いかえますと肺がんの罹患リスクを上げる主な要因は親と共有する遺伝的あるいは環境的要因のなかには存在しないと考えられます。


 今回の研究で、胃がん、大腸がん、肝臓がんには親子間での集積が見られたことから、両親のいずれかにこれらのがんの病歴をもつ人は、家族的にこれらのがんに罹患しやすいといえます。しかし「家族的」ということばには「遺伝」だけでなく「環境」という意味も含まれますから、親と共有してきた生活様式や食習慣などにがん罹患の危険要因が存在する可能性も示しています。


 他方、肺がんには家族的影響はほとんどみられず、その罹患には親子で共有してきた生活とは異なる危険要因が強く影響していることが示されましたが、その典型として喫煙習慣が考えられます。このことは、現在わが国で死亡率が上昇しつつある肺がんの予防のためには、喫煙対策を強化する必要があること意味しています。

copy_rihgt_JACC