子どもの数と結腸がんとの関連

玉腰浩司


 人は生活していく中で多くのものに接し、それらは大小、良悪様々なかたちで人の健康に影響を与えます。疫学の分野では、接することを曝露といい、接したものを曝露因子といいます。例えば、喫煙、飲酒、運動習慣などは多くの疾病の発生と関連していますが、このような生活習慣も曝露因子と見なすことができます。


 皆さんもご存知のように、わが国では急速に少子化が進み、2002年の合計特殊出生率(女性が一生の間に生む子どもの数)は1.32と過去最低の数字を示しています。少子化が社会・経済に与える影響は大きく、近年、国を挙げての少子化対策が進められていますが、少子化が人々の健康に何らかの影響を与える可能性も推測されます。そこで、私たちは子どもの有無、数を曝露因子と考え、結腸がん発生との関連を検討しました。


多くの子どもを持つ女性ほど結腸がんになりにくい。

 40歳から79歳の男性24,877人と女性36,629人を1988年から約7.6年間追跡したところ、それぞれ202人、198人の方が結腸がんに罹患されました。私たちの研究では、追跡開始時に子どもの数をお尋ねしており、0人、1人、2人、3人、4人以上の5群に分けて、結腸がんの発生との関連を検討しました。子どもの数が0人の方たちを基準として、他の4つの群の方たちがどれくらい結腸がんに罹患する危険があるかを計算したところ、男性では、子どもが1人の方は1.03倍、2人の方は1.07倍、3人の方は1.12倍、4人以上の方は0.72倍となり、男性においては子どもの数と結腸がん発生との関連はみられませんでした。


 一方、女性では、1人の方は0.74倍、2人の方は1.00倍、3人の方は0.70倍、4人以上の方は0.59倍となり、子どもの数が多いほど結腸がんの発生する危険が低いことが分かりました。結果を導き出す過程においては、統計学的な手法を用いることにより年齢、喫煙、飲酒、運動習慣、肉の摂取量など結腸がんの発生に影響を及ぼす可能性のある要因についても考慮しており、女性の子どもの数はこれらの要因とは別に結腸がんの発生と関連していることが示唆されました。

【図1】男女別の子供の数と結腸がん発生との関連

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