肥満と結腸がんによる死亡との関連

玉腰浩司


 肥満が高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の原因となることは良く知られています。今回、私たちは「肥満と結腸がんによる死亡との関連」について研究しましたので、その結果を簡単に記します。


女性の肥満は結腸がん死亡と関係がある

 40歳から79歳の男性31,585人と女性42,735人の方を1988年から約10年間追跡したところ、それぞれ127人、122人の方が結腸がんで亡くなられました。私たちの研究では、追跡開始時に身長と体重をお尋ねしており、それらをもとに肥満の指標であるBody Mass Index(以下BMIと略します)を求め、結腸がんの死亡との関連を検討しました。


 BMIは肥満の代表的な指標であり、体重(Kg)を身長(m)の2乗で割ることにより求められます。 1999年に日本肥満学会から出された判定基準によれば、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満と定義されます。今回、私たちの研究では、BMIをさらに細かく、20未満、20以上22未満、22以上24未満、24以上26未満、26以上28未満、28以上の6つに分け、結腸がんによる死亡との関連を検討しました。


 BMIが20以上22未満の人たちを基準にした場合に、他の5つの群の人たちがどれくらい結腸がんで死亡する危険があるかを計算したところ、男性では、20未満の人は0.44倍、22以上24未満の人は0.63倍、24以上26未満の人は0.65倍、26以上28未満の人は0.73倍、28以上の人は0.64倍となり、男性においては肥満と結腸がんによる死亡との関連がみられませんでした。


 一方、女性では、同様にBMIが20以上22未満の人たちを基準として、20未満の人は1.61倍、22以上24未満の人は1.28倍、24以上26未満の人は2.23倍、 26以上28未満の人は2.27倍、28以上の人は3.41倍となり、BMIが大きくなるほど、すなわち肥満度が増すほど結腸がんによって死亡する危険が高くなることが分かりました。BMIが20未満の痩せた人でもリスクが上昇しているように見えますが、ここで得られた1.61倍という値は統計学的には意味のある差ではありませんでした。


 また、この研究では、開始時のアンケートで20歳ごろの体重も記入していただいており、同様に20歳ごろのBMIと結腸がん死亡との関連を検討したところ、女性では20歳ごろのBMIが大きい人ほど結腸がんによって死亡する危険が高くなるという結果が得られました。結果を導き出す過程においては、統計学的な手法を用いることにより年齢、喫煙、飲酒、運動習慣、肉の摂取量などについても考慮しており、女性の肥満はこれらの要因とは別に結腸がんによる死亡と関連していることが示されました。


 肥満が結腸がんを発生させるメカニズムの一つとして、インスリン抵抗性の存在が考えられています。肥満はインスリン抵抗性を生み、結果的に高インスリン血症となります。インスリンには結腸の上皮細胞やがん細胞を増殖させる作用があるため、結腸がんの発生に繋がるという説です。このように、インスリン抵抗性は高血圧や糖尿病などの生活習慣病のみならず、結腸がん発生にも強く関与しています。


 今回の研究では、男性では肥満と結腸がん死亡との間に関連はみられませんでした。しかしながら、欧米の研究ではむしろ女性より男性において肥満は結腸がんの危険因子となると述べられています。日本人では女性のみで両者の関連がみられた理由については、今後の研究課題ですが、日本人と欧米人との間の肥満の度合や生活習慣の違いが関係しているのかもしれません。

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