日本の大規模コホート研究による肝臓がんとコーヒーとの関連の検討

黒沢洋一


 わが国の三大死亡原因は悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患の生活習慣病であり、その予防対策が国民的課題となっています。がんには、胃がん、肺がん、大腸がん、肝臓がんなどがあります。肝臓がんはアジア地域に多く、日本も肝臓がんによる死亡が多い国として知られています。肝臓がんの原因として、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、アルコール摂取などがあげられますが、現在では、C型肝炎ウイルスが最も大きな要因であるといわれています。最近、コーヒーが肝臓がんを予防するのではないかという報告もありますが、まだ明確になっていません。そこで、JACC Studyにおいて、コーヒーと肝臓がんとの関連を調べました(Br J Cancer 2005に発表)。


コーヒーを飲む人は肝臓がん死亡が少ない

 1988年より約110,792人の方々を1999年まで観察したところ、男性287人、女性114人の肝臓がん死亡が観察されました。このデータをもとにコーヒーの摂取状況と肝臓がん死亡との関連を調べました。図1は、コーヒーをほとんど飲まない人の肝臓がん死亡の危険度(死亡率)を1としたときの、コーヒーを1日1杯未満飲む人、コーヒーを1日1杯以上飲む人の相対的な肝臓がん死亡の危険度を示したものです。

 コーヒーの摂取状況は、教育程度、喫煙状況と関連があるといわれており、また、高齢者ではコーヒーを飲む人が少なくなるなど、年齢による差もみられます。そのため、年齢、教育程度、タバコ、飲酒などの要因を統計学的に調整してコーヒーの摂取状況と死亡状況との関連を調べています。


 その結果、男性、女性ともに、コーヒーを飲んでいる人はほとんど飲まない人に比較して肝臓がん死亡の危険度が小さくなりました。毎日1杯以上飲んでいる人はほとんど飲まない人に比較して肝臓がん死亡の危険度が約半分に低下しました。さらに、肝臓がんは冒頭にも述べましたようにC型肝炎などの肝臓疾患の既往と関連が極めて大きいので、肝臓疾患既往の有無別にコーヒーの影響を検討しました。その結果、肝臓疾患既往の有無別にみても同様の傾向がみられ、コーヒーを飲む人はほとんど飲まない人に比較して肝臓がん死亡が少ないことがわかりました。

【図1】コーヒー摂取状況と肝臓がん死亡


今後の課題

 今後、コーヒーに含まれているどの成分(カフェイン、クロロゲン酸、カフェストールなど)がどのような機序で肝臓がんを予防する効果があるのか、また、肝がんの主要な発生要因と考えられている肝炎ウイルスに感染している人において、コーヒー摂取により肝臓がんになるのを予防することができるかどうかを明らかにすることが重要な課題だと考えられます。

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