日本人における禁煙年数と慢性閉塞性肺疾患死亡との関連:JACC研究

李 媛英


 厚生労働省の平成23年の統計によると、慢性閉塞性肺炎(COPD)は日本人の主要な死因の一つとなっています。COPDは主な原因は加齢と喫煙であり、その予防には禁煙があることと知られています。しかしながら、禁煙を何年続けると効果が上がるか、日本人でのエビデンスがほとんどないのが現状です。そこで、本研究では日本人の一般集団において、喫煙習慣とCOPD死亡のリスクとの関連、またどのぐらい禁煙すれば非喫煙者と同レベルまでCOPDで死亡する危険性が減るかを調べ、結果を国際雑誌Preventive Medicine(  年、巻、頁)に報告しました。ここではその概要をまとめました。


 年齢が40-79歳でCOPD、喘息、その他の肺疾患、循環器疾患、がんの既往歴がない日本人男性41,465名と日本人女性52,662名を1988年から2008年まで追跡し、285名(251名の男性、34名の女性)のCOPDによる死亡を把握しました。研究開始時にアンケート調査により、喫煙習慣を調査し、また禁煙者(やめた)については、禁煙の年数を尋ねました。次に統計学的な手法を用いて、年齢、肥満度、飲酒、散歩時間、運動時間、教育歴、ストレス、高血圧と糖尿病既往歴の有無、喫煙本数、喫煙を開始年齢などの背景要因を調整して、各グループのCOPD死亡リスクを検討しました。


 図1で示すように、男女とも喫煙者(やめた、吸っている)は、非喫煙者(吸わない)よりCOPDの死亡リスクが高いことが分かります。また、男女とも一日に吸う本数が多いほど、リスクは上昇しました。特に女性は男性と比べ、喫煙とCOPD死亡リスクとの間により強い関連がみられました。


 禁煙年数の区分による解析は、女性でタバコをやめた人数が少なかったため、男性のみで解析を行いました。図2に示したように、禁煙年数は0-4年、5-9年、10年以上と3群に分けました。現在タバコを吸っている群を基準とした場合、禁煙年数が長いほど、COPDにより死亡するリスクは下がることが示されました。そして、そのリスクは研究開始時点で5-9年タバコをやめていた群で低くなり、10年以上タバコをやめていた群では生涯タバコを吸っていない群と同程度に低下することが分かりました。


考察

 女性は男性に比べ喫煙によるCOPD死亡リスクが高い傾向にあることは、白人を対象とした研究でも報告されています。女性の方がタバコの影響を受けやすい理由としては、女性は肺自体が小さく、気道径が短いこと、女性の気道は外部からの刺激に過敏に反応すること、体内に吸収されたタバコの煙が女性ホルモンにより有害度が低いものから有害度が高いものに代謝されることなどが考えられます。


 日本人男性では、研究開始時点から遡って5年以上禁煙していればCOPDの死亡率は低下し、10年以上の禁煙により非喫煙者と同じレベルにまで下がることが示されたことは特筆すべきことです。

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