緑茶と膵がんの関連

林櫻松


 日本は、1人あたりの緑茶消費量が世界で最も多い国です。緑茶にはカテキン類やビタミンCなど抗酸化作用を持つ成分が含まれており、多くの動物実験において、発がん物質の作用を打ち消したり、がんの進行を遅らせる効果が明らかになっています。疫学研究の結果も、緑茶のがん予防効果を示していますが、緑茶の膵がん予防効果についてはまだ分かっていません。


 そこで、日本全国45地域の一般住民を対象とするコホート研究(JACC Study)のデータを用い、膵がんと緑茶の関係を検討しました。専門誌(Pancreas 2008; 37:25-30)に発表した研究論文の内容を報告します。


 この研究では、1988~90年に110,792人を対象に行った生活習慣アンケートから緑茶飲用に関する情報を集め、その後10年以上にわたって追跡調査を行いました。追跡期間中、292人の方が膵がんで亡くなりました。データ解析では、緑茶の飲用杯数に基づき5つのグループに分類し、1杯未満/日を基準とした場合の、 1-2杯/日、3-4杯/日、5-6杯/日、7杯以上/日のグループの膵がん死亡リスクを求めました。


1日7杯以上緑茶を飲む人でも膵がん死亡リスクの低下は見られない

 図1に男性と女性をまとめた結果を示します。緑茶を1日1杯未満しか飲まない方たちの膵がん死亡リスクを1とした場合、1日1-2杯、1日3-4杯、1日5-6杯、1日7杯以上緑茶を飲む人たちのリスクはそれぞれ、1.0倍、1.1倍、1.0倍、1.2倍であり、いずれも統計学的に有意な関連ではありませんでした。さらに、男性と女性に分けて解析を行った場合もいずれも膵がん予防効果を認めませんでした。

【図1】緑茶飲用と膵がん死亡リスク(男性)


緑茶と膵がんの関連をどう見るべきか

 今回の研究では、緑茶を1日7杯以上飲む人たちでも、膵がん死亡リスクは下がらない、言い換えれば、緑茶の膵がん予防効果は見られない、という結果が得られました。

 これには、2つの可能性が考えられます。1つは、動物実験で得られた緑茶のがん予防効果が、そのまま人間を対象とする疫学研究で得られるとは限らないということです。

 もうひとつは、遺伝要因のほか、食事や生活環境など様々な要因が、膵がんの発生に影響を及ぼしているため、結果として緑茶だけを取り上げても効果があるように見えなかったということです。


 今回の研究だけで、膵がんに対する緑茶の予防効果がないと結論づけることはできません。緑茶飲用は、がんだけでなく、循環器疾患のリスクを下げる効果も知られており、適度の緑茶飲用は健康にいいと考えられています。

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