健常な日本人での、性、年齢、生活習慣による血清形質転換成長因子(TGF-β1)濃度の変動

林櫻松


 TGF-β1は、正常細胞の増殖を促進する因子として同定された物質ですが、その後の研究により、多くの上皮細胞や血球細胞などの増殖を抑制する働きを持つことも明らかになりました。先行研究では、健常人において血清TGF-β1濃度が大きく変動することが報告されています。 しかし、喫煙、飲酒などの生活習慣が血清TGF-β1濃度に及ぼす影響はまだ分かっていません。


 そこで、私たちは、すでに実施されたJACC Studyコホート内症例対照研究で対照として選ばれた健常人9142人について、性、年齢、喫煙、飲酒、肥満など生活習慣の違いで血液中のTGF-β1値がどう変わるかを調べ、研究結果を専門誌(Disease Markers、2009年、27巻、23-28ページ)に発表しました。その概要をご紹介します。


年齢を重ねるにつれ血清TGF-β1濃度が下がる

 図1に40歳から79歳まで10歳階級別に血清TGF-β1の濃度を示します。すべての年齢階級に おいて男性のTGF-β1濃度が女性より高いことが分かりました。また、男女とも加齢とともに血清TGF-β1濃度が下がるという統計学的に有意な傾向が認められました。

図1 男女別、10歳階級別の血清TGF-β1濃度


男性では肥満者、喫煙者、飲酒者の血清TGF-β1濃度が上がり、女性では肥満者の血清TGF-β1濃度が上がる

 図2にBMI、喫煙状況、飲酒状況別に血清TGF-β1濃度を示します。男女とも肥満を表す指標であるBMIが高くなるにつれ、血清TGF-β1濃度が上がる傾向が見られ、統計学的にも有意でした。男性では、非喫煙者や非飲酒者と比較して、現在喫煙者、現在飲酒者の血清TGF-β1濃度が高いことが分かりました。また、喫煙本数が多いほど、飲酒量が多いほど、血清TGF-β1濃度がさらに高くなることが明らかになりました。

図2 BMI、喫煙状況、飲酒状況別の血清TGF-β1濃度


性、年齢、生活習慣による血清TGF-β1濃度の変動について

 今回の研究により、健常人においてTGF-β1濃度が性や年齢、喫煙、飲酒、肥満などの影響を受けていることが明らかになりました。健常人で得られたこれらの知見は、今後TGF-β1濃度とがんや循環器疾患などの慢性疾患との関係を調べる研究に役立つものと考えられます。

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