女性生殖歴と膵がん死亡の関係

林櫻松


 我が国における膵がんの死亡数は年間2万人を超えており、その約半分の1万人が女性です。非喫煙者と比べて、喫煙者は膵がんリスクが約2倍高いことが分かっています。しかし、女性に喫煙者は少ないことから、男性より喫煙の影響が小さく、喫煙以外の要因が膵がんの発生と関連すると考えられています。


 そこで、私たちは、女性の生殖歴(初潮年齢、妊娠・出産歴、初産年齢、閉経年齢)と膵がん死亡との関連を検討し、結果を日本消化器病学会雑誌(Journal of Gastroenterology 2006年、41巻、878-883ページ)に発表しました。ここでは結果をご紹介します。


 1988年から40~79歳の女性63,273人 を約10年間追跡したところ、154人の方が膵がんで亡くなりました。調査開始時に生活習慣アンケートにお答えいただいた初潮年齢や、妊娠出産歴、初産年齢、閉経年齢などの情報とその後の膵がん死亡との関連を検討しました。


 図1に出産回数と膵がん死亡リスクとの関連を示します。出産したことがない方および1回出産された方を基準(死亡リスクを1とします)とした場合、 2-3回出産された方、4-5回出産された方、6回以上出産された方がどの程度膵がんで死亡する危険があるか計算したところ、それぞれ0.7倍、0.8倍、0.8倍でした。出産回数が多い女性ほど、膵がん死亡リスクは低下していましたが、これは統計学的に有意な関連ではありませんでした。

【図1】出産回数と膵がん死亡リスク


 初潮年齢については、初潮年齢が早い女性と比べ、遅い女性では膵がん死亡リスクが1.5倍高いという結果でしたが、統計学的に有意な関連ではありませんでした(図2)。

【図2】初潮年齢と膵がん死亡リスク


 初産年齢や妊娠回数、閉経年齢についても同じような解析を行いましたが、いずれも膵がん死亡リスクとの間に有意な関連は見られませんでした。


女性生殖歴と膵がんとの関連をどう見るべきか

 今までに女性生殖歴と膵がんリスクとの関連を調べた疫学研究では、一致した結果は得られていません。今回の研究では、出産回数が多い女性ほど膵がん死亡リスクが低く、初潮年齢が遅い女性ほど膵がん死亡リスクが高い、という可能性は示されましたが有意ではなく、また、他の生殖歴と膵がんとの間には有意な関連が見られませでした。女性における膵がんの発生要因については、さらなる研究が求められています。

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