食習慣と膵がんの関係

林櫻松


 膵臓は、インスリンや消化酵素を分泌する重要な臓器です。そこにできる膵がんは、発見時にはかなり進行しているものが多く、 5年生存率が約10%と最も予後が悪いがんの1つです。膵がんは、近年増加しつづけていますが、発生原因がほとんどわかっていません。


 そこで、私たちは前向きコホート研究という信頼性の高い研究手法で食習慣と膵がん死亡との関係を調べ、結果を栄養とがんの専門誌 (Nutrition and Cancer 2006、56巻、40-49ページ)に発表しました。その概要をご紹介します。


 日本全国の45の地域において、40歳から79歳までの一般住民約11万人を対象に、1988年から1990年まで、食生活を含む生活習慣についての調査を行いました。食生活調査は33の食品について、その摂取頻度(ほとんど毎日食べる、1週間に3-4回、1週間に1-2回、1か月に1-2回未満、ほとんど食べない)をたずねました。

 研究参加者を1999年末までに追跡し、追跡期間中に死亡された人についてその死因を調べ、研究開始時に答えていただいた各食品の摂取頻度と膵がん死亡リスクとの関連を分析しました。


 研究が始まってから1999年末までの間に、300人(男性150人、女性150人)が膵がんで亡くなりました。


肉類の摂取が膵がん死亡リスクと関連しない

 各肉類(牛肉、ポーク、ハム・ソーセージ、鶏肉)の摂取頻度と膵がん死亡との間に有意な関連は見られませんでした。同様に、各緑黄色野菜や果物については、膵がんの死亡と統計学的に有意な関連も認められませんでした。


山菜や漬物の過剰摂取で膵がんリスクが増大する

 図1と図2は、お尋ねした5段階の摂取頻度を3段階に区切りなおし、一番少ない区分の人たちの危険性(膵がんでの死亡しやすさ)を1としたときに、他の区分の人たちがどれくらい膵がんで死亡しやすいかを相対的に示しています。山菜や漬物をたくさん食べる人たちのほうが、あまり食べない人たちに比べて膵がん死亡リスクが高くなり、特に、ほとんど毎日山菜を食べる男性は、最も食べない男性の膵がん死亡リスクが3倍高いことがわかりました(図1)。

【図1】山菜摂取と膵がん死亡リスク

【図2】漬物摂取と膵がん死亡リスク


食事と膵がんとの関連をどう見るべきか

 人間はいろいろな食品を時に応じて摂取していますので、人を対象とする疫学研究で食事とがんとの関係は見出しにくいのが現状です。


 今回の研究でも、ほとんどの食品の摂取頻度と膵がん死亡リスクとの間に関連が見られませんでした。理由として、食生活の多様性や食習慣の変化などが考えられています。ここでは、山菜や漬物の過剰摂取が膵がん死亡リスクを高める可能性が示唆されましたが、ほかの研究で確認する必要があります。


 膵がんにおける食事の影響についてはまだ結論を出せる段階ではありませんが、欧米では燻製または加工の肉の摂取が膵がんリスクを上昇させるとの報告があり、ビタミンC、食物繊維の摂取が膵がんリスクを下げることも示されています。膵がんを予防するには、肉類や、山菜、漬物の過剰摂取を避け、緑黄色野菜・果物を積極的に摂取するよう心がけましょう。

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