血清IGF-I, IGF-II, IGFBP-3, TGF-β1, SOD活性, sFasと栄養摂取状況との関連

丸山広達


 JACC Studyでは、血清中のIGF-I, IGF-II, IGFBP-3, TGF-β1, SOD活性, sFasといった、各種がんとの関係が示唆されている血液指標を研究目的のために測定しています。しかしながら、日本人を対象に、これら血液指標とがんの発生に関わっている栄養摂取状況との関係について、検討を行った研究はみられませんでした。そこで、約10,000人の方を対象に、これら血液指標の血中濃度が低い方から順にほぼ同じ人数になるように4つのグループ(四分位)に分け、グループ毎の栄養摂取状況を分析し、専門誌に発表しました(Asian Pac J Cancer Prev. 2009;10 Suppl:7-22.)。


インスリン様成長因子(IGF)濃度

 IGF等は、細胞の成長促進因子であり、がん細胞の成長も促すことが知られています。またインスリンに似た働きをすることから糖尿病予防との関係も示唆されています。今回の研究では、IGF-I、IGF-II、IGF-1に結合するタンパク(IGFBP-3)、それぞれの血中濃度が高いほど、乳製品や果物を多くとっている人の割合が高い傾向がみられました(図1、2)。その他、乳製品に多く含まれているカルシウムや、果物に多く含まれているビタミンCを多く摂取している傾向がみられました(図3、4)。


形質転換成長因子(TGF-β1)濃度

 TGF-β1も正常細胞やがん細胞の増殖促進因子であるとされています。今回の研究では、そのTGF-β1の血中濃度が高いほど、ナトリウム摂取量が多く、またコーヒー摂取量が少ない傾向がみられました。


SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)活性

 SODは、がんや心疾患との関与が指摘されている活性酸素を無害化する酵素の1つです。今回の研究では、SOD活性が高いほど、コーヒーや紅茶を多くとっている人の割合が多く、また食塩摂取量が少ない傾向がみられました。


可溶性Fas

 sFasは、時期が来ると細胞が自然に死滅するアポトーシスと呼ばれる現象に関係しているとされ、がん患者では健常人に比べその血中濃度が高い傾向にあるとされています。今回の研究では、sFasの血中濃度が高いほど、マンガンや葉酸の摂取量が多い傾向がみられました。


 今回の研究では、がんとの関係が示唆されている血液指標と、いくつかの栄養摂取状況との間に関係があることがわかりました。ただし一部の結果は、先行研究と一致しなかったり、生物学的な説明が難しかったりすることから、今後さらなる研究により、詳細な検討が必要です。しかしながら、このような研究は、栄養摂取と、がんやその他の生活習慣病との関係を立証していく上で有用であると考えます。

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