胆管・胆のうがんと食生活との関連

松葉剛


 生活習慣とがんなどの病気の発生や死亡の関係について調べ、これらの病気の予防方法を明らかにすることを目的に、全国の約11万人の方を対象にコホート研究という研究を行っております。


 この研究はその中で胆管・胆のうがんと食生活との関係を調べたもので、1988年から1990年の間に行ったアンケートを元に約10年間の追跡を行い、胆管・胆のうがんで亡くなった方とそうでない方々との間に食生活についてどのような差があったかを調べています。

 この結果は専門誌(癌の臨床 第49巻 第8号 655-670頁 2003年)に発表しておりますが、その概要を報告します。


男性では胆管がんで、女性では胆のうがんで脂肪を多く摂る人に死亡率が高い

 食事の摂取品目について一週間の摂取頻度をアンケートで調べています。男性ではチーズやマーガリンをよく食べると答えた人のほうが、そうでない人に比べて約2倍(チーズは2.00倍、マーガリンは1.76倍)胆管がんによる死亡率が高いことがわかりました。

 また女性では胆のうがんでほぼ同様の結果(チーズで2.23倍、マーガリンで2.08倍)となりました。


男性では胆管がんで、女性では胆のうがんで鮮魚を多く摂る人にがんで死亡する危険性が低い。

 男性では鮮魚をよく摂取すると答えた人のほうが、そうでない人に比べて胆管がんで死亡する危険性が0.53倍であることがわかりました。危険性が0.53倍ということは、食べない人のほうが約2倍この病気にかかって死亡しやすいことを意味しています。同様に女性では胆のうがんにおいてこの値が0.43倍となっています。


食べ合わせなどを考慮すると男女ともにフライを多く摂る人に胆管・胆のうがんで死亡する危険性が高い

 調査の結果を単純に計算すると脂肪をたくさん摂ることが胆管がんや胆のうがんの発生や死亡に影響しているように見えますが、食生活では食べ合わせなども考える必要もあります。


 そこで同時に複数の要因について検討できる多変量解析(Coxの比例ハザードモデル)という手法を使って、このような摂取品目間の影響を取り除いた分析も行っています。その結果、チーズやマーガリンについては危険性が下がったものの、胆道がんと胆のうがんを合わせてみた結果では「フライの摂取」というやはり脂肪の摂取に関する項目でよく食べる人は食べない人に比べて男性で2.58倍、女性で2.96倍これらの病気で死亡する危険性が上がることがわかりました。


 わが国は南米のチリとならんで世界的に胆管がんや胆のうがんが多発する地域として知られています。このように地域によって差が見られることから、食生活などの多様性がこの病気の発病に何らかの影響を与えているのではないかと関心がもたれています。今回の検討では、脂肪の摂取と胆管がんや胆のうがんの間になんらかの関係がみられることがわかりました。このような脂肪摂取との関連が、男性では胆管がんと、女性では胆のうがんとの間に見られる原因は明らかではありませんが、胆のうがんが女性に多いことなど何らかの性差による影響が存在することは明らかです。


 鮮魚の摂取については鮮魚に含まれる何らかの物質が予防的に作用しているのか、または鮮魚を多く摂るような食生活全体がこの病気を予防しているのか、またはその双方が影響しているのかについては今のところ不明です。今後このような点が解明されることによってこの病気の予防につながる発見が期待されています。

copy_rihgt_JACC