コーヒー、緑茶、ウーロン茶の摂取と脳卒中・心疾患死亡

峰晴陽平


はじめに

 「コーヒーとお茶類は世界的に飲まれている飲料で、グローバル化に伴って消費量は 増えてきています。これらの飲料はカフェインやポリフェノールなど様々な成分を含有し、健康への影響が注目されています。 最近の欧米の研究では、コーヒーの摂取が虚血性心疾患のリスクを下げると報告されています。 ただ、コーヒーと脳卒中の関連についてはあまり検討されておらず、 アジア諸国で多く飲まれている緑茶やウーロン茶に影響については、ほとんど報告がありません。


 脳卒中と心疾患はともに血管の病気であり(脳・心血管疾患)、がんと並ぶ日本人の主要な死亡原因となっています。 日常的に摂取される飲料と脳卒中・心疾患との関係を調べることは、予防の観点からも重要です。 そこで、私たちは脳卒中、心疾患、がんの既往歴がなく、コーヒー、緑茶、 紅茶、ウーロン茶の摂取状況がわかっている40‐79歳の約77,000名を平均13年追跡し、 これら飲料の摂取量と、脳卒中・心疾患による死亡の関連について検討しました (Journal of Epidemiology and Community Health 2011; 65(3):230-240)。 (Prev Med誌 2012;54:32-37掲載)。


コーヒー、緑茶、ウーロン茶の摂取は脳卒中や心疾患のリスクを低下させる

 図1に示されるように、男性においては、コーヒーの摂取が脳卒中による死亡のリスクを減少させ (1日3 杯以上の摂取で 55% リスクを減少)、女性においては、緑茶の摂取が虚血性心疾患による死亡のリスクを減少させました (1日6 杯以上の摂取で 58%リスクを減少)。 ウーロン茶は男性の脳卒中・心疾患による死亡のリスクを低下させました(1日1杯以上の摂取で61%リスクを減少)。 また、紅茶と脳卒中・心疾患との関連は認められませんでした。 これら 4種類の飲料から算出したカフェインの摂取量は、男女ともに脳・心血管疾患のリスク低下と関連していました (男性で最大 38% 、女性で最大 22%のリスク減少)。さらに細かくみると、高血圧の人、肥満のない人(BMIが25 kg/m2未満)で カフェイン摂取と脳・心臓血管疾患による死亡率低下との関連が強く認められました。


 緑茶やコーヒーに豊富に含まれるカフェインは脂肪の燃焼を促進するなど代謝を活性化します。 また、緑茶に含まれているエピガロカテキンガレートやコーヒーに含まれているクロロゲン酸は、 抗酸化作用があることが報告されており、これらの成分が血管の炎症やダメージを抑える可能性が考えられます。


コーヒーや緑茶の過剰摂取は脳卒中や心疾患による死亡のリスクを上げる

 男性ではコーヒー、女性では緑茶でより強く脳・心臓血管疾患による死亡リスク低下効果が 表れることが示されました。 ただし、図1に示されるように、摂取が最も多い群ではその死亡率低下効果が減弱したり、 逆に死亡率が上がる傾向が認められますので、過剰摂取は控えたほうがいいようです。全死亡においても、 脳卒中・心疾患と同様の結果が得られています。お酒と同様にコーヒーやお茶類も適量を守ることが必要と考えられます。


図1.脳・心臓血管疾患による死亡のリスク

 摂取量が最も少ないグループのリスクを1とした。 コーヒーは週1回未満、週1-6日、一日1-2杯、1日3杯以上、緑茶は週1回未満、週1-6日、1日1-2杯、 1日3-5杯、1日6杯以上に分けた。カフェインは摂取量に応じて5つのグループに分け、摂取の最も少ないグループをQ1、 最も多いグループをQ5とした。*, p<0.05

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