喫煙と卵巣がんリスク

丹羽慶光


 卵巣がんは日本では多くないものの、世界全体でみると比較的多いがんです。しかし、日本でも1975年と1993年を比較すると年齢調整罹患率で1.5倍と増加傾向にあります。出産回数が減ってきていること、肥満が増えていること、などがその原因として挙げられていますが、食事、コーヒーやアルコール摂取、喫煙などの生活習慣要因の関与については、まだ確定したものはありません。そのような中、日本では若い女性の喫煙率は上昇してきています。そこで、JACC Studyのデータを用いて、喫煙と卵巣がん罹患との関連を検討し、専門誌(J Obstet Gynaecol Res 2005; 31:144-51)に発表しました。


喫煙習慣のある人はない人に比べ、卵巣がんになりやすい

 40歳から79歳の女性34639人を約7.6年間追跡したところ、39人の方が卵巣がんに罹患されました。ベースラインでお尋ねした喫煙状況により、タバコを吸ったことのない方(非喫煙者)、やめた方(禁煙者)、吸っている方(喫煙者)を分類し、卵巣がんとの関連を検討したところ、非喫煙者に比べ、禁煙者で1.63倍、喫煙者で2.27倍、罹患リスクが高くなることがわかりました。


 この結果は、年齢、地域、BMI、身長、乳がん・卵巣がんの家族歴、初潮年齢、閉経年齢、出産歴、飲酒、教育を統計学的に調整しており、卵巣がんになった方が少ないため有意ではないものの、喫煙により卵巣がんになりやすくなる可能性が示唆されました。


 さらに、喫煙者を生涯喫煙量(喫煙本数×喫煙年数 P-Y; Pack-years=喫煙本数/20×喫煙年数)で分けて非喫煙者と比べたところ、最も高いレベル(20P-Y以上)では中間レベル(10-19P-Y)より低下しましたが、喫煙量が増えるほど卵巣がんリスクも上昇する傾向が有意にみられました。


 今回の検討では、長期にわたる喫煙が卵巣がんのリスクと関連していました。タバコ煙中に含まれるベンゾピレンによるDNA付加体は、喫煙量と喫煙年数に比例して、卵巣細胞中に増えるという報告もあります。おそらくタバコ中の発がん物質への長期曝露が、卵巣がんリスクを上昇させたと考えられます。


 しかし、今回の研究では、卵巣がんの罹患者数が少なく、また卵巣がんの組織型・細胞型の情報がありません。日本人における卵巣がんと喫煙との関連を調べるためには、より多数を対象とし、詳細な情報を収集するコホート研究が必要です。

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