肥満と卵巣がんとの関連

丹羽慶光


 卵巣がんは世界では最も多いがんの一つです。日本では比較的まれですが、1975年と1998年を比較すると年齢調整罹患率で1.5倍と増加してきています。


 肥満は多くのがんでリスク要因とされています。卵巣がんでもいくつかの研究で、肥満との関連が見出されていますが、一方で関連なしと報告している研究もあります。日本で今までに行われた2つの研究でも、関連はみられませんでした。一方、中年の女性の平均体重は、1969年の51.7kgから2001年には54.7kgと増加しています。そこで、JACC Studyのデータを用いて、肥満と卵巣がん罹患との関連を検討し、専門誌(J Obstet Gynaecol Res 2005; 31:452-8)に発表しました。


肥満は卵巣がんリスクを上昇させる

 40歳から79歳の女性36456人を約7.6年間追跡したところ、38人の方が卵巣がんに罹患されました。ベースラインで報告いただいた身長、体重から肥満の指標であるBMI(Body Mass Index: 体重(kg)/身長(m)2)を計算し、<18.5(やせ)、18.5-24.9(標準)、25.0-29.9(過体重)、30.0<=(肥満)に分類し、その後の卵巣がんとの関連を検討しました。


 年齢、地域、乳がん・卵巣がんの家族歴、喫煙状況、飲酒状況、初潮年齢、閉経年齢、出産歴、教育を統計学的に調整したところ、標準群に比べ、過体重群で2.24(95%信頼区間1.13-4.47)倍、肥満群で1.78(0.24-13.34)倍、罹患リスクが高くなることがわかりました。また、BMIが増えるほど卵巣がんリスクが上昇するという傾向も統計学的に有意でした。


 今回の検討では、肥満の程度が卵巣がんのリスクと関連していました。そのメカニズムですが、肥満により、血中のテストステロン(男性ホルモンの1つ)値が増加することが知られています。また、男性ホルモンが高いことが卵巣がんと関連することも報告されています。


 したがって、男性ホルモンが卵巣上皮細胞中でどのような働きをするかは正確に分かっていませんが、肥満が男性ホルモン上昇を介して卵巣がんリスクを上昇させた可能性が考えられます。


 今回の研究では、卵巣がんの罹患者数が少なく、また卵巣がんの組織型・細胞型の情報がありません。また、肥満の指標としてBMI値を用いていますが、腹囲周囲径など中心性肥満を判断する情報はありません。今後、日本人における卵巣がんと肥満との関連を調べるためには、より多数を対象とし、詳細な情報を収集するコホート研究が必要です。

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