喫煙者および過去喫煙者における肝がんリスク

荻本逸郎


 喫煙は多くのがんでその発生に関与していることが指摘されています。しかし、肝がんに対しては、研究報告によって罹患や死亡の危険が増すとするもの、影響がないとするもの、影響が明らかでないとするものなど、その影響の有無がまだはっきりしていません。


 この研究では、JACC Studyのデータを用いて、喫煙習慣の有無や喫煙量と肝がん死亡との関連を検討しました。 (Kurume Medical Journal, Vol. 51, 71-81, 2004) 公表されている研究成果へ


 喫煙に関する質問の他、肝疾患の既往歴など必要項目に回答した66,974名の方を解析対象として、肝炎ウイルスの感染と関連が強いと考えられる、肝疾患の既往の有無を考慮して解析しました。


喫煙量が多くなると肝がん死亡リスクが増大する

 調査時点で喫煙していた人も既に禁煙していた人も、非喫煙者にくらべ、特に年齢が高い男性では肝がんによる死亡の危険が大きくなっていました。さらに、年齢が高い男性では、統計学的には有意ではありませんが、早くから喫煙したり、調査までの総喫煙量が大きい(喫煙期間と1日あたりの喫煙本数の積により計算)等、喫煙に曝露されていればいるほど肝がんによる死亡の危険が大きくなることが疑われました。また、肝疾患既往歴がある場合には、調査時点で40歳から59歳までと比較的若かった女性でも喫煙によって肝がん死亡の危険度が大きくなることが疑われました。


 今回の研究結果に加えてさらに詳しい検討をする必要がありますが、最近の他のいくつかの国で行われた追跡調査と同様に、喫煙が肝がんに罹患して死亡する危険性を高めることが示唆されました。また、もともと肝臓の病気を持っている方では、特に喫煙を避ける必要があるかもしれません。日本においてはJACC Studyの他にも大規模な追跡研究が実施されています。今後、これらの成果をあわせ、肝がんの予防について検討していくことが重要です。

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