飲酒者及び過去飲酒者における肝がんリスク

荻本逸郎


 日本では肝がんの大半がB型、C型肝炎ウイルスの感染によるものであるとされています。このため、日常生活や医療を介する感染の広がりを防ぐ対策が実施されてきました。また最近は、B型あるいはC型肝炎感染者におけるがんの早期発見にも力が入れられています。一方で、ウイルス感染がない人の肝がん発生要因や、感染者における発生促進要因を確かめることも肝がん予防対策のために重要です。


 この研究では、JACC Studyのデータを用いて、飲酒習慣の有無や飲酒量と肝がん死亡との関連を検討しました。 (Kurume Medical Journal, Vol. 51, 59-70, 2004)

 飲酒に関する質問の他、肝疾患の既往歴など必要項目に回答した66,974名の方を解析対象として、肝炎ウイルスの感染と関連が強いと考えられる肝疾患の既往の有無を考慮して解析しました。


飲酒の影響は特に禁酒者で強く認められました

 全体では、禁酒をした人の肝がん死亡の危険度は、飲酒をしない人の8倍になっていました。禁酒の理由は調査していませんが、体の調子が悪くなったために禁酒した方が多く含まれていると考えられます。一方、肝疾患にかかったことがない人でも、統計的には有意ではありませんが禁酒した人で肝がん死亡が多くなる傾向が見られました。また、同じく統計学的には有意な差はありませんでしたが、一回の飲酒量が多いこと、過去の飲酒量の総合計が多いことなどと肝がん死亡との関連が認められました。


 今回得られた飲酒と肝がんとの関連についてはさらに詳細な検討を必要としますが、飲酒する場合には「健康日本21」の「節度ある適度な飲酒」を参考にすることが望ましいものと思われます。

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