肺がんと食習慣との関係  

小笹晃太郎


 1988年から90年に生活習慣の質問票にお答えいただいた男性42,940人、女性55,308人のうち、1997年末までに男性446人、女性126人が肺がんで亡くなられました。そこで、私達は、肺がんで亡くなられた方とそうでない方を比べて、どのような方が肺がんになりやすいかをいろいろな要因別に調べました。


 ここでは、食習慣と肺がん死亡の関連について紹介します。この結果は、日本癌学会誌(Japanese Journal of Cancer Research) 92巻12号1259-1269頁2001年に公表しています。

 食習慣は、ごはんとみそ汁については食べる頻度と量、それ以外のさまざまな食品(32品目)については食べる頻度をお尋ねしました。頻度は「ほとんど食べない」から「ほとんど毎日」の間を5段階に区切りました。


緑黄色野菜や果物の摂取頻度が多いほど、特に男性で、肺がんで死亡しにくい

 緑黄色野菜や果物をたくさん食べると、肺がんをはじめとしたがんになりにくいことが今までにも示されています。本研究では、このことが現在の日本人でも言えることが確認されましたが、女性ではあまり明瞭な結果になりませんでした。


 図は、男性では、緑の葉の野菜やみかん、その他の果物をたくさん食べる人のほうが、あまり食べない人に比べて肺がんになりにくいことを示しています。お尋ねした5段階の食べる頻度を3段階に区切りなおしていますが、一番少ない区分の人の危険性(肺がんでの死亡しやすさ)を1としたときに他の区分の人がどれくらい肺がんで死亡しやすいかを相対的に示しています。最もよく食べる人は、最も食べない人の約4分の3くらいの危険性にはっきりと低下しました。


 しかし、女性ではあまり変わりませんでした。 緑黄色野菜や果物には、カロテン類をはじめとした抗酸化物質や抗がん作用を持つ物質がたくさん含まれています。これらは、特にタバコの煙に含まれるような発がん物質に強く作用して、がんを防ぐと思われます。そのために、女性より男性で予防効果が明瞭に現れたと思われます。



【図1】葉の緑の野菜の摂取と肺がん死亡


【図2】みかん類の摂取と肺がん死亡


【図3】その他の果物の摂取と肺がん死亡


脂肪をとり過ぎると肺がんが増加するか?

 近年、動物性脂肪の取り方が多いと肺がん(特に腺癌といわれる種類)になりやすいと言われています。日本人の脂肪の取り方は、昔の穀類が主食であった時代と比べて、この数十年の間にたいへん増加し、肉食が主体の欧米の水準に近づきつつあります。


 本研究では、女性で、ハムやソーセージ、レバー、揚げ物をよく食べる人ほど肺がんで死亡しやすいという現象がみられました。ここで見ている食品が脂肪のとりすぎを示しているのかどうかについては慎重に考える必要があり、すぐに結論を出すことはできませんが、脂肪摂取と肺がんとの関係を表しているものかもしれません。 しかし、男性ではこれらの食品と肺がん死亡との関連はあまりみられず、むしろハムやソーセージ、チーズをよく食べる人ほど肺がん死亡が少ないという結果になりました。このような男女差が、女性には喫煙者が少ないということの影響なのか、発がんに影響するメカニズムが男女で異なることを示しているのか、あるいは偶然このような結果が得られただけなのかを、現時点で明らかにすることはむずかしく、今後の研究が必要と思われます。



【図4】ハム・ソーセージの摂取と肺がん死亡


【図5】レバーの摂取と肺がん死亡


【図6】揚げ物の摂取と肺がん死亡


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