血清中カロテノイドと尿路上皮がんの危険度

小笹晃太郎


 1988年から90年に生活習慣の質問票にお答えいただいて血液をご提供いただいた人たちから、 1999年末までに尿路上皮がん(注1)に罹られた(亡くなった方を含みます)42人の方と、それらの人と年齢と居住地域を合致させて適切に選んだ対照の方(尿路上皮がんでない方)124人とについて、保存血清中のカロテノイドの濃度を比較しました。

 公表雑誌:米国泌尿器学会雑誌(Journal of Urology) 173巻、5号、1502-1506頁、2005年。


カロテノイドとは何か?

 カロテノイド(注2)は緑黄色野菜や果物に多く含まれ、代表的なものとしてβカロテン(注3)があります。他にも多くの物質があり、αカロテン、βカロテン、リコペン(特にトマトに多く含まれる)、 βクリプトキサンチン(特にみかんに多く含まれる)などがあります。これらの物質は、体のなかのいろいろな物質が酸化されて壊されたり、有害なものに変化したりすることを防いでくれます。その結果、種々のがんの発生を抑制することができると考えられています。人間は体内でカロテノイドを合成することはできませんから、食物としてとる必要があります。


注1:膀胱、尿管および腎盂(腎臓の中で尿が集まってくる場所)のがんには共通性がありますので、これらを尿路上皮がんと総称します。

注2:カロテノイドとは、カロテンとその類似物質の総称です。

注3:「βカロチン」という表記のほうがなじみがあるかもしれません。


血液中のカロテノイド濃度が高いほど尿路上皮がんになりにくい

 図は、血液中のβカロテン、総カロテン、カロテノイドのいずれでも、血液中の濃度の高い人ほど尿路上皮がんになる危険性が小さいことを示しています。それぞれの血液中の濃度を3分の1ずつ3段階に分けて、一番低い区分の人が尿路上皮がんになる危険性を1としたときの、他の区分の人の相対的な危険性を示しています。いずれも、いちばん高い濃度の区分の人は、一番低い区分の人に比べて、尿路上皮がんになる危険性が少なくなり、約10分の1くらいまで低下しています。


 このような予防作用は、カロテノイド全体として作用していると考えられていますので、緑黄色野菜や果物などをバランスよく食べて、カロテノイドの摂取を増やすことが望ましいと考えられます。 βカロテン単独のサプリメントなどを大量に摂取することは、米国での研究で肺がんが増加したなどの報告もあり、かえって有害となる可能性があります。

【図1】尿路上皮がんリスク

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