食習慣と尿路上皮がん死亡の関係

坂内文男


 私達は1988年から1990年にかけて、全国45か所で11万人以上の方に御協力をいただき生活習慣に関するアンケート調査を行いました。 そして、約10年後の1999年末まで観察を行い、食習慣と尿路上皮がん死亡の関連を調べました。症例は全部で88例であり、膀胱がんが65例と最多でした( 尿路上皮がんとは第10回修正国際疾病分類にある、腎盂がん、尿管がん、膀胱がんの各疾患を指します)。 詳しい結果はNutrition & Cancer 誌(2004年50巻1号33-39ページ)に掲載されています。 ここに主な結果を問いQuestion &回答 Answer形式で示します。


Q1:性別と年齢は尿路上皮がんと関係しますか。

 A:国内および諸外国の報告をみますと、男性は女性よりも尿路上皮がんに罹りやすいといわれています。また、高年齢になるほど尿路上皮がんに罹りやすくなるといわれています。 今回の結果では、男性は女性よりも2.6倍尿路上皮がんで死亡する危険があるとの数値を得ています。


Q2:喫煙は尿路上皮がんと関係しますか。

 A:以前より、多くの疫学研究で喫煙は尿路上皮がんと関係することが報告されています。

 実は性別、年齢よりも喫煙の方が尿路上皮がんと深く関係するようです。 報告により数値は多少異なりますが、タバコ喫煙者は非喫煙者に較べて尿路上皮がんに2倍から10倍罹りやすいといわれております。 私達も喫煙者は非喫煙者に較べ2.5倍から5.7倍尿路上皮がんで死亡する危険が高いとの結果を得ました。 また、その危険度は喫煙指数(一日の喫煙本数×喫煙年数)が増すほど高くなることがわかりました。


Q3:尿路上皮がんを予防するような食習慣はあるのでしょうか。

 A:いくつかの食品が尿路上皮がんを防ぐのではないかと推測されています。 代表的なものとしてはビタミンAを含むニンジンなどの緑黄色野菜、ビタミンCを含む果物などです。

 今回検討した結果では、毎日牛乳を飲むこと、毎日果物を摂取することと尿路上皮がん死亡との間に逆の関連が認められました。 牛乳に関しては、以前より、あまり飲まない人に尿路上皮がんが多いことが指摘されていました。牛乳はビタミンA以外にがん予防効果のある植物エストロゲンやラクトフェリンを含み最近注目されています。 また、果物には解毒作用や抗酸化作用のある物質が豊富に含まれているといわれています。今回の結果から直ちに牛乳と果物に尿路上皮がん予防効果があるとは結論できませんが、その機序を調べることは今後の重要な課題と思われます。また、今回は緑黄色野菜に関連はみられませんでしたが、さらなる研究が必要と思われます。


Q4:喫煙者にも牛乳と果物は良いのでしょうか。

 A:私達は非喫煙者と喫煙者に分けて、牛乳、果物と尿路上皮がん死亡の関連を調べました。注目すべきことに、喫煙するけれども毎日牛乳を飲む人、同じく喫煙するけれども週に3日以上果物を摂取する人は、これらをあまり摂取しない人に較べて尿路上皮がん死亡の危険が低いとの結果を得ました。このことは喫煙者にとって、牛乳と果物の規則的な摂取が大事な食習慣であることを示唆しているようです。もちろん、喫煙中止が最も大切であることはいうまでもありません。


結語:尿路上皮がん予防にむけて

 今回得られた結果をまとめますと以下の2つになります。
1 喫煙中止が尿路上皮がん死亡減少に最も重要である。
2 規則的な牛乳、果物摂取が同がん死亡を減少させる可能性がある。

copy_rihgt_JACC