肺炎クラミドフィラの持続・繰返し感染と冠動脈疾患死亡との関連

桜井直美


 冠動脈疾患を発症した患者さんの中には高コレステロール血症を伴わないものも多く、高血圧、喫煙、糖尿病など冠動脈疾患の原因として確立されている危険因子を併せても、発症者の約半分程度しかその原因が説明できないと言われています。冠動脈の動脈硬化病変では、炎症や免疫を担当する細胞が集合していることが知られています。現在では、動脈硬化病変は血管壁における慢性的な炎症反応であると広く考えられています。われわれは文部科学省大規模コホート研究において、約13年間追跡調査を行った結果、循環器疾患死亡リスクファクターの一つとして肺炎クラミドフィラ(旧学名:肺炎クラミジア)との関連を見出し、その結果を専門誌に発表しました(J AtherosclerThromb. 2010;17:510-516)。


肺炎クラミドフィラって何?

 肺炎クラミドフィラは文字通り肺炎を引き起こす細菌の一種です。しかし、肺炎クラミドフィラは感染しても症状があらわれないことが多く、肺炎クラミドフィラに感染した証拠となる抗体は、成人の50〜60%以上が保有していると言われています。またその抗体は感染をブロックする働きが弱いため、抗体があっても再び感染します。そのため、肺炎クラミドフィラの感染は生涯にわたり持続あるいはくり返されていると考えられています。


なぜ肺炎を引き起こす細菌が動脈硬化に関係するのでしょうか

 今までの研究で、動脈硬化病変部位から肺炎クラミドフィラが検出されていることから、肺炎クラミドフィラは血管壁に慢性の炎症反応を引き起こす要因の一つとして考えられるようになってきました。実際に病変部位から検出されるだけではなく、人工的に培養した血管内皮細胞に対しても炎症作用を起こすことが実験的に確かめられています。


肺炎クラミドフィラ感染と冠動脈疾患死亡との関連性

 そこで、私たちは、肺炎クラミドフィラ感染が冠動脈疾患による死亡のリスクファクターの一つとなるかどうかを次のような方法で検討しました。209人(男性113人、女性96人)の冠動脈疾患で死亡した人と性、年齢などを合わせて選択した対照者209人(男性113人、女性96人)のそれぞれの血液中の肺炎クラミドフィラの抗体(IgA*)を調べて比較したのです。その結果、女性ではIgA抗体価の高い人は低い人に比べて冠動脈疾患の死亡が2.6倍と高くなることが明らかとなりました。男性でも同様な傾向が見られましたがその関連は統計学的に有意とはなりませんでした。


 * IgA:持続・繰り返し感染がある場合に見られる抗体

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