血清酸化LDLと大腸がん死亡との関連

鈴木康司


 酸化ストレスは発がんにおいて重要な役割を果たしていると考えられています。 酸化ストレスは生体内で酸化と抗酸化のバランスが崩れて、酸化反応が進みやすくなっている状態のことです。 生体内では酸化ストレスに関与する様々な物質がありますが、我々は酸化LDLに着目しました。 酸化LDLは、コレステロールを運搬する低比重リポタンパク(low density lipoprotein、LDL)が活性酸素の働きにより酸化されて生成されるものです。血液中の酸化LDL濃度が高いと動脈硬化を引き起こす要因となることが知られています。また血液中の酸化LDLに対する抗体が存在し、酸化LDL濃度を低く維持する役割を果たしていると考えられています。我々は疫学的に血清酸化LDLおよびその抗体と大腸がんとの関連について調べ、専門誌(Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 13巻1781-1787ページ 2004年)に発表しましたので、 その概要をご紹介します。


血清酸化LDL濃度が高いと大腸がんの死亡の危険度が増加

 今回の検討では、JACC Studyの参加者で、1988~1990年に血清を研究用にご提供いただいた方のうち、 1999年までに大腸がんに罹ったまたは大腸がんで死亡されたグループ(症例群)とその比較対照群(対照群)について、 保存血清を用いて酸化LDLと酸化LDL抗体の測定を行いました。


 対照群の酸化LDLと酸化LDL抗体の分布がそれぞれ4等分になるようにグループ分けを行い、 大腸がん死亡リスクを、性、年齢、調査地区、喫煙習慣、飲酒習慣、緑葉野菜の摂取、運動時間、大腸がんの家族歴、BMI、 血清総コレステロール値およびα-トコフェロール値の影響を考慮して検討しました。


 図に血清酸化LDLおよび酸化LDL抗体と大腸がん死亡との関連を示します。酸化LDLの最低値群(1)の人たちの大腸がんリスクを1 とした時の他の群の相対的な大腸がんリスクを調べると、最高値群(4)は約3.1倍でした。 血清酸化LDL抗体は大腸がんリスクと明らかな関連は認めませんでした。


 今回の結果より、血清酸化LDLの高値は大腸がんの発生に関連している可能性が示唆されました。 酸化LDLは、過酸化脂質の増加、抗酸化酵素の減少、活性酸素の増加、COX-2発現などの発がんに関わる要因と関連があることが 報告されていますが、酸化LDLと大腸がん発生の直接的なメカニズムについては明らかではありません。 さらに研究を積み重ね、検討することが必要と考えます。

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